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新しいシャンソンを新しい言葉に乗せて

   シャンソンの訳詞のつれづれに                      ~ 松峰綾音のオフィシャルブログへようこそ ~

京都南座探訪(二)~寅さんと渥美さん

 前回の記事『京都南座探訪(一)~「山田洋次の軌跡」』の続きから早速。

チラシの一部分 

「~フィルムよさらば~」と名付けられたこのイベントへの山田洋次監督の思いを中心に、前回はご紹介してみましたが、今日はこのチラシにある『寅さん、南座に現る。』がテーマです。



   映画セットの体験コーナー
 午前中の『男はつらいよ』の日替わり上映が終わり、午後の映画上映までの休憩時間に、南座の舞台は、大急ぎで様変わり。

「くるまや」のセット
 寅さんのおいちゃん、おばちゃんが商っている柴又のだんごや「くるまや」の映画セットが作られます。
 体験料500円を払うと、花道から、この舞台に上がることができます。
 舞台上には大きな照明やカメラが据え付けられていて、寅さん映画の撮影現場にタイムスリップしたような気分で、さながら「くるまや」のお客さん役エキストラA・B・C・・・・という感じでしょうか?
 「いらっしゃいませ~ お好きな席におかけくださ~い」とおだんごやさんの従業員に扮したスタッフの方に声をかけられました。
 店先のテーブル席が一杯だったので、奥の茶の間に腰を下ろすことに。
昔のテレビ。その上には『車寅次郎』と署名入りの『反省』と書かれた書がかけられています。
間髪を入れず、「くるまや」のお姉さんは、お茶とお菓子を運んできてくれました。
お団子じゃなくて、生八つ橋だったのが、京都っぽくて面白かったですが、のんびりとしただんごやの雰囲気全開です。

 テレビの上の「反省」の書 くるまやの皆さんと記念撮影
更に「お写真撮りましょう!」と「くるまや」の家族が写った後ろのパネルと一緒に記念撮影を。
いつもブログに顔を出すのは控えているのですが、今日は特別出ちゃいます。・・・寅さんの家族と溶け込んでいるでしょう?

  二階に上がる階段   二階の寅さんの部屋
 二階に上る階段です。寅さん映画でお馴染みですね。
 そして二階は寅さんの部屋。意外と整頓されています。
夕焼けに蝉の声
 南座ならではのサービス、回り舞台が一周します。
 「くるまや」の朝から夜まで夏の一日の変化を回りながらお楽しみください>という趣向で、一日の光の変化と外の生活音が時間と共に移ってゆきます。
 夕焼けが障子に映って蝉の声がしていました。

 <なりきり寅さん>というコーナーもありました。
あのトランク、あのジャケット、あの帽子一式を貸してくれて、南座の花道で記念写真を撮ってもらえるのです。
さっそく続々と色々な寅さんが。

なりきり寅さんセット なりきり寅さんと花道
 私も・・・と一瞬思ったのですが、さすがにこれは思い留まりました。寅さんになってライトを浴びながら南座の花道で写真を撮るというまたとない経験をし損ないました・・・・女寅さんもちょっと面白かったかな?残念。

   寅さんのトランク
 展示コーナーには、歴代の「男はつらいよ」の説明、パネル、撮影現場のエピソード、マドンナたち、豊富な資料があって楽しかったです。
 映画で使われた小道具なども色々紹介されていましたが、寅さんが旅先から「くるまや」の家族に送った年賀状もありました。
 こんな文章で綴られています。

   新年おめでとうございます。
  思い起こせば旧年中は恥ずかしき事の数々
  私 深い反省の中に新しき年をむかえておりますゆえ
  本年もどうぞよろしくお願いいたします。
           車 寅次郎拝 

 寅さんは結構筆まめで、旅先から頻繁に便りをしていますし、ツボを心得た、実はなかなかの名文家であると私は密かに思っています。
寅さんの旅行鞄の中身
 もう一つ、面白いものがありました。
 いつも寅さんが持っているトランクには何が入っていると思いますか?
 寅さんトランク初公開です。
 *<鉄道・バス路線案内図><時刻表><全国地図>・・・全国飛び歩いているのですから納得です。
 *<歯ブラシ><髭剃り><浴衣><下着><トイレットペーパー><目覚まし時計><トランジスターラジオ><扇子>・・・・大変なんですね。
 *<蚊取り線香><正露丸><改源>・・・・・笑ってしまいました!<正露丸>は私の父の愛用薬、<改源>は私、良く効くんです。
 *<花札><さいころ>・・・・渡世人ですね。
 *<便箋><封筒>・・・・厳選した荷物の中に忍ばせているのはなかなか奥ゆかしいです。


   『渥美清の伝言』
 寅さんを28年間演じ続けた渥美清さんは、1996年(平成8年)68歳で転移性肺ガンにより他界されました。
 亡くなる一年前に最終作48作目の『寅次郎紅の花』に主演していらして本当に寅さんとして役者人生を全うされたのだと思います。
渥美清の伝言 
 『渥美清の伝言』(NHK「渥美清の伝言」制作班編1999年発行)という本があります。
 亡くなる数か月前に、NHKの「クローズアップ現代」で「寅さんの60日」という番組を放映したのですが、この番組を取材してゆく過程での渥美清像が様々な関係者の証言も交えながら克明に記されています。
 私は、この番組もオンタイムで観ていましたが、かなり病気が進行している時だったようで、非常に憔悴して痛々しく、それでも、対極にあるような寅さんを演じ抜いてゆく一人の演技者の壮絶さ、神々しさに胸打たれたことを今でも忘れません。
 病魔に侵される前、若い頃から、素顔の渥美清さんは非常に物静かで聡明な学究肌の方だったと聞いています。プライバシーは一切表に出さず、普通の良き家庭人に徹していらしたということです。

 私は渥美清さんの大ファンなのですが、初めて心魅かれたのは、ずっと昔、「徹子の部屋」での、黒柳さんとのトークを聞いたときに始まります。
 彼がアフリカ旅行をした時の経験談を語っていて、その時、肌で感じた自然の雄大さや驚異、現地の人たちとの触れ合いを感動を込めて話していらした、そのお話が本当に素敵だったのです。
 人は、こんなに生き生きと真っ直ぐに、目に見えるようにものを表現して語ることができるのかと、陶然として聞き入ってしまいましたし、こんな風にものを感じ、魅力的に話をする人が世の中にいたとはと、子供心に心底感服したことを今も思い出します。
 スクリーンの中の素っ頓狂な寅さんと、あの時の深い人格が滲み出るような渥美さんとは一見そぐわない気がしますが、でも人を惹き付けてやまない魅力に一脈通じるものをいつも感じていました。

撮影所の楽屋
 最後に。
 
 南座の展示の中に、渥美さんの楽屋の再現がありました。布団が置かれてある楽屋。
 最終作では出番以外はいつも横になっていらしたそうです。
 しみじみとした思いを胸に、南座を堪能した一日でした。


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