
『5月のパリが好き』完成しました
パリ旅行報告の続きをと思いつつ、前回の記事で、『5月のパリが好き』の訳詞を作ってみようかしら・・・などと口走ってしまいましたので、まずはここから着手、で、結構自信作が出来上がりました!
今回の私の訳詞ですが、アズナブールっぽい、いなせなパリジャンの独白という感じではなく、ジャクリーヌ・フランソワの歌のように小粋なパリのデッサンのイメージで作ってみました。
やはり旅行効果でしょうか、詩を書いていてもパリの風景が鮮烈に浮かんできて・・・。
眩しい光の中 花屋の店先に
薔薇の香りが漂い 朝が目覚めて行く
腰下ろし 煙草ふかし カフェは賑やかに
一日が また 始まる (松峰訳詞)
少し意訳ですが、一部分だけご披露を!
・・・おわかりですよね!
例の煙草をふかした素敵な花屋の店主さんまで登場させてしまいました・・・映像が自然に詩に刻まれてゆきます。こういう感覚が今回の旅の最大の収穫かな・・・この曲、これから歌って行けたらと思っていますので、いつか機会があれば是非お聴きになってみて下さい。
さて、では早速、『5月のパリを行く』その二です。
ねずみの夢見た「サン・マルタン運河」を行く
今回滞在したのは、castiglione(カスティリオーネ)という老舗ホテル、21時くらいまで日が暮れないこの時期のパリの夜長に、目一杯歩き回って帰ってきても安全便利な地の利をという条件で選んだ結果、地下鉄のマドレーヌとコンコルドの中間地点にある、この上ない立地条件のホテルでした。
その上、何と、知る人ぞ知るあのサントノーレ通りに面しており、近隣はサンローラン、シャネル、エルメス、プラダ・・・あり得ないようなゴージャスな通り沿いだったのです。
更に、ホテルの目の前には24時間体制でこのあたりのブランドショップを警戒するガードマン詰所があり、毎夜帰宅する私たち二人連れを覚えて、会釈までしてくれるようになって、私達の為のSP付き!の安全豪華なホテル暮らしを満喫したのでした。衝動買いの誘惑さえ克服できれば、女性の旅にはこういう宿もお薦めです。
そんなホテルにぐっすり眠って、一日目、Mさんは早速、日本でも有名な、アラン・デュカスが主催するお菓子教室に参加するため朝早くから出発。
じゃあ私もと・・・同じく朝から元気にホテルを出ることにしました。夕方の待ち合わせ時間まで、お互いに自由行動、大人の旅はかくあるべし、彼女がケーキなら、私はシャンソンでしょう!というわけで、まず朝一で、サンマルタン運河に向かうことにしたのです。
BARBARA(バルバラ)が歌う「Gueule de nuit(夜の顔・夜の入り口)」という曲があります。
この曲、私は大好きで『夜のねずみ』というタイトルで訳詞し、折に触れ歌っていますので、コンサートにいらして下さった方にはお馴染みかと思うのですが、サンドゥニの夜の隙間に生きる「ねずみ」、・・・と自らを称する一人の娼婦を主人公とした歌です。
「ねずみ」=彼女は、自分が娼婦として生きなければならない宿命を素直に受け入れ諦めつつも日々結構前向きに生きているのですが、気が好い真っ直ぐな気性の女性で、実は密かに想っている彼がおり、彼女の夢は、その彼と一緒に、まだ一度も見たことのないサン・マルタン運河の夜明けを見ることなのです。
夜明け色に染まってゆく
サン・マルタン運河の空を
一度も見たことないもの
ずっと心に描いてきた
(松峰訳詞)
というフレーズが何度もワルツのリズムで繰り返されていてとても美しい曲です。 ・・・で、私の中では「サン・マルタン運河」は「ねずみ」の憧れの場所そのものですので、夜明けは叶わないにしろ、せめて朝のサン・マルタン運河沿いをメロディーなど口ずさみつつ、散策してみたいなと思ったのでした。
メトロのレピュブリック駅下車、セーヌ川とウルク運河を結ぶ4.5キロの運河沿いの道を2時間ほどかけて、ゆっくりと歩き始めました。
でも、「ねずみ」は極めてマイナーな専売特許、一般には、まず『アメリ』ですね。アメリが小石で水切りをしたあの映画の名シーンが印象的かと思います。
更に古くは、1949年のマルセル・カルネ監督の映画『北ホテル』の舞台でしょうか、貧しさの中で翻弄されていく男女の愛憎がなんとも切なく風景と重なっていたのが思い出されます。
爽やかな風景。
夜の世界にだけ生き暮らしてきた「ねずみ」が見たかったのは、朝のキラキラとした光に照らし出された、こんなさっぱりと抜けるような情景だったのですね。
白い花をつけたマロニエの青葉が清々しく5月の風にそよいで、どこまでも並木道は続きます。
両岸にはお洒落なカフェやお店が連なっていますが、まだ早かったためか、どこも閉まったままで、朝の散歩をする人の姿がまばらでした。
古色蒼然とした太鼓橋に上って運河を眺めました。
目はマロニエの梢の高さになって、白い花が見事に咲き誇っているのが良くわかります。
遠くまで、静かに続くサン・マルタン運河です。賢そうな犬を連れたお散歩中の男性。
途中、散策終着点のパリ東駅に向かって道を折れると、ヴィルマン公園と表示された小さな公園がありました。華やかな5月です。 パリ東駅に到着です。
買い物三昧
そして、メトロで一路バスティーユまで。
いよいよ・・・楽譜探し、気合が入ります。
いくつかいつも立ち寄るお店はありますが、チェック必須店、私の一番のお気に入りはここ、バスティーユのボーマルシェ通りにある<la librairie musicale>という楽器店で、二階が楽譜専門のスペースになっています。
クラッシックとポピュラーの楽譜に分かれていて、結構広い店内に、ぎっしりと所狭しとばかりの楽譜・・・宝の山です。
用意してきたリスト片手に、ひたすら探し続け、その他の楽譜もくまなくチェックし、気が付くと3時間近くが経過していましたが、どうやら周囲はそんなお客さんばかりみたいで、さながら図書館のようです。
お店のお兄さんは、全く当たり前のように邪魔をせず、静かに気配を消していてくれて、さすがプロ! 訊けば大体はたちどころに答えてくれます。
でも残念なことに、リストアップしてきた楽譜は絶版だったり、出版されていなかったりで、ほぼ全滅でした。
ポピュラーの楽譜というのは日本でもそうですが、新旧に関わらずレアなものですと、そのほとんどは出版されることがなくて、出版物として手に入れることは至難の業なのです。
しかも、私が好み訳詞したいと思うものは、特殊な曲が多いようで、結局大体は、譜面おこしから始めざる得ないことになります。
だったら、楽譜屋さんになど行かなくても・・・という話ですが、本屋さんと同じで、実際足を運んで、表紙を眺め手に取ってみないとわからない閃きや効用は確かにあり、犬も歩けば・・・みたいに、行けば、きっと何かはヒットしてきます。
そんなわけで、今回も面白そうなものを、直感と衝動とで、十数冊買いこんできました。
満足して、近くのヴォージュ広場まで足を延ばし、カフェで一息。
広場は四辺を繋ぐ回廊で取り囲まれています。
更に、今度はモンパルナスにある大型CDショップまで足を延ばして、ここでも2時間余りの音楽三昧。
「シャンソン・フランセーズ」というコーナーが、いわゆるシャンソンの売り場なのですが、フランスは、日本よりずっと動きが緩やかなようで、新しいものも勿論豊富ですが、昔のままのCDも売れなくても売り場からすぐには引き揚げず、かなり長く置いてあります。昨年も一昨年もその前もあったな・・・というCDも健在でした。
音楽の流れる店内で、気持ちよくかなりの数を購入し、荷物はずっしり重くなりましたが、テンションは高くかつ軽やかに、いつの間にか夕方となり、この日のシャンソン探訪は終了、Mさんとの待ち合わせ場所にいそいそと向かったのでした。
パリ旅行報告の続きをと思いつつ、前回の記事で、『5月のパリが好き』の訳詞を作ってみようかしら・・・などと口走ってしまいましたので、まずはここから着手、で、結構自信作が出来上がりました!
今回の私の訳詞ですが、アズナブールっぽい、いなせなパリジャンの独白という感じではなく、ジャクリーヌ・フランソワの歌のように小粋なパリのデッサンのイメージで作ってみました。
やはり旅行効果でしょうか、詩を書いていてもパリの風景が鮮烈に浮かんできて・・・。

眩しい光の中 花屋の店先に
薔薇の香りが漂い 朝が目覚めて行く
腰下ろし 煙草ふかし カフェは賑やかに
一日が また 始まる (松峰訳詞)
少し意訳ですが、一部分だけご披露を!
・・・おわかりですよね!
例の煙草をふかした素敵な花屋の店主さんまで登場させてしまいました・・・映像が自然に詩に刻まれてゆきます。こういう感覚が今回の旅の最大の収穫かな・・・この曲、これから歌って行けたらと思っていますので、いつか機会があれば是非お聴きになってみて下さい。
さて、では早速、『5月のパリを行く』その二です。
ねずみの夢見た「サン・マルタン運河」を行く
今回滞在したのは、castiglione(カスティリオーネ)という老舗ホテル、21時くらいまで日が暮れないこの時期のパリの夜長に、目一杯歩き回って帰ってきても安全便利な地の利をという条件で選んだ結果、地下鉄のマドレーヌとコンコルドの中間地点にある、この上ない立地条件のホテルでした。


その上、何と、知る人ぞ知るあのサントノーレ通りに面しており、近隣はサンローラン、シャネル、エルメス、プラダ・・・あり得ないようなゴージャスな通り沿いだったのです。

更に、ホテルの目の前には24時間体制でこのあたりのブランドショップを警戒するガードマン詰所があり、毎夜帰宅する私たち二人連れを覚えて、会釈までしてくれるようになって、私達の為のSP付き!の安全豪華なホテル暮らしを満喫したのでした。衝動買いの誘惑さえ克服できれば、女性の旅にはこういう宿もお薦めです。
そんなホテルにぐっすり眠って、一日目、Mさんは早速、日本でも有名な、アラン・デュカスが主催するお菓子教室に参加するため朝早くから出発。
じゃあ私もと・・・同じく朝から元気にホテルを出ることにしました。夕方の待ち合わせ時間まで、お互いに自由行動、大人の旅はかくあるべし、彼女がケーキなら、私はシャンソンでしょう!というわけで、まず朝一で、サンマルタン運河に向かうことにしたのです。
BARBARA(バルバラ)が歌う「Gueule de nuit(夜の顔・夜の入り口)」という曲があります。
この曲、私は大好きで『夜のねずみ』というタイトルで訳詞し、折に触れ歌っていますので、コンサートにいらして下さった方にはお馴染みかと思うのですが、サンドゥニの夜の隙間に生きる「ねずみ」、・・・と自らを称する一人の娼婦を主人公とした歌です。
「ねずみ」=彼女は、自分が娼婦として生きなければならない宿命を素直に受け入れ諦めつつも日々結構前向きに生きているのですが、気が好い真っ直ぐな気性の女性で、実は密かに想っている彼がおり、彼女の夢は、その彼と一緒に、まだ一度も見たことのないサン・マルタン運河の夜明けを見ることなのです。

夜明け色に染まってゆく
サン・マルタン運河の空を
一度も見たことないもの
ずっと心に描いてきた
(松峰訳詞)
というフレーズが何度もワルツのリズムで繰り返されていてとても美しい曲です。 ・・・で、私の中では「サン・マルタン運河」は「ねずみ」の憧れの場所そのものですので、夜明けは叶わないにしろ、せめて朝のサン・マルタン運河沿いをメロディーなど口ずさみつつ、散策してみたいなと思ったのでした。
メトロのレピュブリック駅下車、セーヌ川とウルク運河を結ぶ4.5キロの運河沿いの道を2時間ほどかけて、ゆっくりと歩き始めました。
でも、「ねずみ」は極めてマイナーな専売特許、一般には、まず『アメリ』ですね。アメリが小石で水切りをしたあの映画の名シーンが印象的かと思います。
更に古くは、1949年のマルセル・カルネ監督の映画『北ホテル』の舞台でしょうか、貧しさの中で翻弄されていく男女の愛憎がなんとも切なく風景と重なっていたのが思い出されます。

爽やかな風景。
夜の世界にだけ生き暮らしてきた「ねずみ」が見たかったのは、朝のキラキラとした光に照らし出された、こんなさっぱりと抜けるような情景だったのですね。
白い花をつけたマロニエの青葉が清々しく5月の風にそよいで、どこまでも並木道は続きます。
両岸にはお洒落なカフェやお店が連なっていますが、まだ早かったためか、どこも閉まったままで、朝の散歩をする人の姿がまばらでした。
古色蒼然とした太鼓橋に上って運河を眺めました。
目はマロニエの梢の高さになって、白い花が見事に咲き誇っているのが良くわかります。


遠くまで、静かに続くサン・マルタン運河です。賢そうな犬を連れたお散歩中の男性。
途中、散策終着点のパリ東駅に向かって道を折れると、ヴィルマン公園と表示された小さな公園がありました。華やかな5月です。 パリ東駅に到着です。


買い物三昧
そして、メトロで一路バスティーユまで。
いよいよ・・・楽譜探し、気合が入ります。
いくつかいつも立ち寄るお店はありますが、チェック必須店、私の一番のお気に入りはここ、バスティーユのボーマルシェ通りにある<la librairie musicale>という楽器店で、二階が楽譜専門のスペースになっています。


クラッシックとポピュラーの楽譜に分かれていて、結構広い店内に、ぎっしりと所狭しとばかりの楽譜・・・宝の山です。
用意してきたリスト片手に、ひたすら探し続け、その他の楽譜もくまなくチェックし、気が付くと3時間近くが経過していましたが、どうやら周囲はそんなお客さんばかりみたいで、さながら図書館のようです。
お店のお兄さんは、全く当たり前のように邪魔をせず、静かに気配を消していてくれて、さすがプロ! 訊けば大体はたちどころに答えてくれます。
でも残念なことに、リストアップしてきた楽譜は絶版だったり、出版されていなかったりで、ほぼ全滅でした。
ポピュラーの楽譜というのは日本でもそうですが、新旧に関わらずレアなものですと、そのほとんどは出版されることがなくて、出版物として手に入れることは至難の業なのです。
しかも、私が好み訳詞したいと思うものは、特殊な曲が多いようで、結局大体は、譜面おこしから始めざる得ないことになります。
だったら、楽譜屋さんになど行かなくても・・・という話ですが、本屋さんと同じで、実際足を運んで、表紙を眺め手に取ってみないとわからない閃きや効用は確かにあり、犬も歩けば・・・みたいに、行けば、きっと何かはヒットしてきます。
そんなわけで、今回も面白そうなものを、直感と衝動とで、十数冊買いこんできました。
満足して、近くのヴォージュ広場まで足を延ばし、カフェで一息。
広場は四辺を繋ぐ回廊で取り囲まれています。


更に、今度はモンパルナスにある大型CDショップまで足を延ばして、ここでも2時間余りの音楽三昧。
「シャンソン・フランセーズ」というコーナーが、いわゆるシャンソンの売り場なのですが、フランスは、日本よりずっと動きが緩やかなようで、新しいものも勿論豊富ですが、昔のままのCDも売れなくても売り場からすぐには引き揚げず、かなり長く置いてあります。昨年も一昨年もその前もあったな・・・というCDも健在でした。
音楽の流れる店内で、気持ちよくかなりの数を購入し、荷物はずっしり重くなりましたが、テンションは高くかつ軽やかに、いつの間にか夕方となり、この日のシャンソン探訪は終了、Mさんとの待ち合わせ場所にいそいそと向かったのでした。


