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新しいシャンソンを新しい言葉に乗せて

   シャンソンの訳詞のつれづれに                      ~ 松峰綾音のオフィシャルブログへようこそ ~

5月のパリを行く(3) ~地下鉄の切符切り~

 夏のような日差しの中、それでも街は紫陽花色に染まり始めました。
6月ですが、好評につき?!もう少し「5月のパリを行く」・・フランス旅行のご報告を続けてみようかと思います。今日は
(1)~花々とデザートと~、 (2)~シャンソン探訪~ に続いて第三話となります。

   地下鉄に乗ろう
 パリはメトロ(地下鉄)が発達していて、現在全16ラインもあるのだそうです。今回の旅行では、パリの中心部オペラ座界隈に宿泊しましたので、移動はもっぱらメトロで、様々な路線を大いに利用しました。

 では、まずは地下鉄の乗り方から。
地下鉄切符の自動販売機 
 改札口付近には、こんな発券機が設置されています。
 スクリーンにタッチすると、まず、表示言語を選ぶ画面が出てきますが、残念ながら日本語表示はなく、手順を読み解きながら切符購入を。
 とは言っても、切符は行き先に関わらず、全ライン統一料金で、途中何回でも・・・地上に出さえしなければ、・・・乗り換え自由なので、とてもわかりやすいです。しかも有効期限はなく、いつでも好きな時に使えますので、何回も乗る場合にはcarnet(カルネ)と呼ばれる10枚綴りの切符を買うのが便利かと思います。(因みに私はすっかりメトロフリークになり、二回ほどカルネを買い足したのでした。)

 切符をゲットしたら、自動改札口から入ります。システムは日本とほぼ同じですが、切符を通したら、バーを力任せに体で押して進んで下さい。(待っていても自然にバーが開いたりはしませんので。)
 出口では切符の回収はなく、勝手に出ていくだけなので、知らないとホントに良いのかしらと、ちょっと焦ります。

 今回、一番よく利用したマドレーヌ駅。
マドレーヌ駅  電車の到着
 こんな感じの電車ですが、日本との大いなる違いはドアの開閉でしょうか。
 電車がホームに到着しても、ドアは自動では開きませんので、乗りたければ自分で開けましょう(但し閉める必要はありません)。降りるときも同様で、メトロの乗降には、多少の腕力が必要とされるのです。 

 Sortieと書いてあるのは出口です。
 乗り換えはライン番号と終着駅名を確認して進みます。
 地下鉄路線図をいつも携えていれば、割と簡単に、迷わず目的地に到着することが出来ます。
 ただ、日本のような懇切丁寧な車内アナウンスは皆無で、せいぜい駅に着くと一言、怒ったようなぶっきらぼうな声で駅名が一回流れるだけです。
 「ご利用ありがとうございます」とか「お忘れ物ないように」とか「○○線は乗り換えです。」などとは絶対に言いません。
 ・・・降りるも乗るも自分の判断、自分の腕力・・・個人主義とはかくあるものかと妙に納得してしまいました。

 乗り継ぎは、場所によっては、地下道をどこまでも、しかもその間に階段があったりで、ちょっとしたウォーキングですし、古いメトロでは、階段は勾配が急で、まるで寺社の石段のようにすり減っていたりして歴史を感じてしまいますが、でも、エスカレーターは殆どの駅にありませんし、足腰の弱いお年寄りなどは、パリのメトロをどう克服しているのでしょうね。

   地下鉄のミュージシャンたち
 黙々と歩く通路の途中、至るところで、ストリートミュージシャンならぬメトロミュージシャンがそれぞれの音楽を奏でているのが耳に入ってきました。
 パリの地下鉄のミュージシャンは結構音楽レベルが高く、それは交通局が演奏許可するにあたり、オーディションをしているからだと以前に聞いたことがあるのですが、果たして現在もそれは続いているのでしょうか?
メトロ駅7人のミュージシャン 
 彼らの音楽・・・クラシック、ポピュラー、楽器の演奏、歌、個人、グループ、・・・本当に様々です。
 写真がぼやけてしまって殆ど判別できないかもしれないのですが、これは7人グループで大掛かりな演奏をしているところです。なかなか上手でした。お金を集める入れ物に結構大勢の人たちが小銭や紙幣を入れています。

車中のミュージシャン
 今回一番びっくりしたのは、何と車両の中に乗り込んで演奏を始めた人がいたこと、持ち運び用のアンプとスピーカーとマイクを携えて、やおら歌い出したのには本当に驚きました。
 隠し撮りなので、これも写りが悪くごめんなさい。
三曲くらい歌うのに4つか5つの駅を通過したでしょうか?
それから、車両を回り、お金を集めていました。それなりに集まったようで、一仕事終え、電車を降りて行きました。
今度は次の電車に乗り込み、また歌うのでしょうね。
結構上手でしたが、それにしてもかなりな大音量で平然と歌い続けるのです。この光景は以前には見たことはありませんでしたので、最近許されるようになったのでしょうか?(乗客は誰も文句を言ったり車両を移ったりしません)
今回の旅行で、二度ほど同じような場面に遭遇したのですが、メトロはどの路線も大体5分くらい置きに発着しますので、ホームに居て、最大5分間で歌いお金も集めるのは確かに大変。乗客と一緒に演奏も移動してじっくりと聴いてもらおうという知恵者の妙案だったのかもしれません。

   ゲンズブールを訪ねて ~モンパルナス墓地~
 2月に訳詞コンサート「ゲンズブール・イノセント」を開催したことはこれまで何度もご紹介してきた通りですが、皆様に喜んでいただけたことでもあり、「ゲンズブールのお墓参りに行けたら・・・」と密かに思っていました。
塀の向こうはモンパルナス墓地 
 そして、・・・時間の合間を縫って、彼の眠るモンパルナス墓地へと向かったのでした。

 サルトルとボーヴォワール、ボードレールなど、たくさんの著名人、芸術家たちが眠る地でもあります。
モンパルナスから墓地に向かう道。この塀の向こうに庭園墓地が広がります。

良く整備されて、明るい散歩道のような雰囲気です。ここにもマロニエの樹木が葉を広げ、白い花をつけています。
 モンパルナス墓地   花があふれるゲンズブールのお墓
 ゲンズブールの眠る墓石。
 たくさんの花が供えられ、私がお参りしていた間だけでも、大勢の人たちが訪れていました。ゲンズブールの似顔絵、CD,写真・・・・。
 没後20年が経過したのに、未だ彼は愛され、そして如何に永遠のスターであるのかが忍ばれます。
 けれど、多くの意匠を凝らした立派な墓石の立ち並ぶ中で、彼の墓は、このまま通り過ぎてしまいそうなほど簡素でした。
 彼の生前の派手なパフォーマンスとは裏腹に、ひっそりと家族と共に眠っている地。
 私が彼に感じていた「イノセント」な部分が、自然に納得されてくる気がしました。

墓前の地下鉄切符
 メトロの切符が墓前にこんなに沢山供えられていました。
彼のデビュー曲「le poinconneur des lilas(地下鉄の切符切り)」にちなんでのことでしょう。

   地下鉄の切符切り
 日本では『地下鉄の切符切り』という邦題が付けられて、よく歌われている曲ですが、『リラの門の切符切り』『リラ駅の切符切り』という訳題もあります。

 そもそも自動改札となった現代には『地下鉄の切符切り』という言葉自体も死語となり、その存在もピンときませんが、「切符切り」の男が、地下の改札に立ち、乗客の切符に穴をあけ続けるだけのあまりにも単調な仕事にほとほと嫌気がさし、ついにはノイローゼのようになって、そこから逃れるために、自分自身に穴をあける=ピストル自殺をするという悲惨な心境と状況を歌った歌なのです。
 深い闇を抱え持っていたゲンズブール自身の心境を写す、原風景のような詩である気もして、精神分析学的にはなかなか微妙なのではと思うのですが、この歌が、人々の胸に強烈に残って、今も墓石に切符が供えられることになろうとは彼自身予測しなかったことなのではと思います。

 モンパルナスタワーが高くそびえる五月の抜けるような青空の下、ゲンズブールを改めて近くに感じたひと時でした。

   セーヌ河畔の調べ
 この日の夕暮れ時のセーヌ川の岸辺。
 寛ぐ恋人たち。人の波。
セーヌの恋人たち  セーヌ河畔の恋人たち
 何とも言えない詩情があり、セーヌはやはりパリのシンボルなのだなと改めて感じながら、たそがれ時の風情にしばし心を任せました。
 
道行く人と話すミュージシャン
 橋の上で、ここにもストリートミュージシャンたちの奏でる調べ。
 ひとステージ終えて、街行く人と屈託のないおしゃべりをする若者たち。

 そうしている時にもどこか遠くからヴァイオリンの音が風に乗って流れてきました。

 素敵な夕暮れ。
 この日の夕食は、Mさんが予約してくれたシテ島の古いレストランに。
 過ぎてゆく時間を惜しむ、芳醇な旅の一日の終わりでした。


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