新しいシャンソンを新しい言葉に乗せて

   シャンソンの訳詞のつれづれに                      ~ 松峰綾音のオフィシャルブログへようこそ ~

「パリジェンヌの秋」無事終了致しました

 10月7日、ナーダムでのコンサートはお陰様で無事終了致しました。

 10時半に会場入りした時はまだ外は雨。天気予報は一日雨降り。
 「超雨女なんです。ごめんなさい」と申し訳なさそうに話すファムのオーナー石橋さん、でも、超超晴れ女の私、ほどなく雨は上がり、めでたく光の射す一日となりました。

 初めての会場、初めてのお客様、緊張感と期待感とで朝から気持ちが弾んでいました。
 今日は何枚かの写真と共にコンサートの様子をご報告したいと思います。

   秋の装い
 会場である「jazz point ナーダム」
ナーダム
 ナーダムのマダムはファッションデザイナーでもあり、独自のデザインによるファッションショーなど手掛け、活躍中の方です。
 Jazzに造詣の深いご主人と共に、気持ちよく音楽を味わえるライヴハウスをとの思いで、ナーダムを作られたと伺いました。
ナーダム2
 音響、照明、インテリアに至るまで緻密に計算されていて、調和のとれた心地よい空間を作っています。
 「シャンソンのコンサートを開催するのは初めて」「シャンソンの香り漂う演出を考えたいです」とのお言葉通り、そして更に「パリジェンヌの秋」というテーマを意識して下さったお洒落な心配りが随所にありました。

ステージを趣深く飾る花々や小物の数々はファムのコーディネート、壁のタペストリーのブラウンともよく調和し、ステージを素敵に彩って、晩夏から初秋へと移りゆく季節の空気を伝えています。
    ナーダム1    ナーダム3

吹き抜けの天井と石作りの壁が、中世の教会を訪れたような落ち着いた雰囲気を醸し出していました。
ナーダム座席
 お洒落なテーブルセッティングも既になされていて、どこか素敵なサロンに招かれたようです。
コーヒーカップ
「コンサートは、会場に入った瞬間から始まるもの。会場やスタッフのおもてなしもトータルで味わうもの」という私の持論に合致するものを感じ、大いに意を強くしました。

   「パリジェンヌの秋」
ナーダム写真

ファムのWEBにこのような写真を載せて下さいました。

 コンサートの様子が一目瞭然。

 これを真似して、私も作ってみました。
 如何でしょうか。

 この写真で今回のコンサート「パリジェンヌの秋」を追ってみることに致します。
 ナーダム写真2
 左上の写真、右側の帽子をかぶっていらっしゃる方がファムのオーナーの石橋さん。そして、左側のショートカットの女性がウーボの三宅さん、主催者としてのご挨拶をなさっているところです。
 お二人は、学校も同級で過ごしてきた親友同士で、お店立ち上げの時から20周年を迎える今日まで、変わらず良きパートナーとして助け合ってきた仲間とのこと。快活で温かいお人柄にとても魅力を感じます。
 
 この日の私の衣装もお二人のコーディネートによるものです。

 白いドレスの写真は、第一部「夏の名残り」のステージ。
 夏の名残り、白コットンのレースのワンピースが羽のように軽いのですが、ピンクベージュのスヌードを手に持って秋の演出をしてみました。
 一部の中で『僕になついた猫』を歌った時、突然、フワフワしたピンクの猫を抱えているような気がして、歌いながら思わず抱きしめていました。
ナーダム4
 島崎藤村の『初恋』を朗読しています。秋の初めの林檎畑の情景が私自身の心の中にもくっきりと見えてきた気がしました。
 『初恋』は格調高い文語詩、シャンソンとは異質のものと普通には思われますが、ステージに違和感なく調和して、聴く方の胸に響けば良い、という思いが私には強くありました。
休憩時間

 「言葉を音に乗せて語ってゆく」・・・音楽が流れていても、そうでなくても言葉そのものに音律があることをいつも感じるのです。

 この写真は休憩時間のワンショット。ほっとひと息の顔をしています。

 赤いドレスの写真は、第二部「パリジェンヌの秋」のものです。
 パンツスーツをステージで着用したのは初めてですが、如何でしょうか。
 右端の写真は『リベルタンゴ』を熱唱しているところ。
 真紅がこの曲のイメージにしっくりくるのでは。

 ファムのご案内状に、<ドレスコード「秋めいたアイテム」>と記されていました。

 「これが皆様にはハードルが高く感じられたようなのだけれど、・・・」
 「でも、日常を離れた少し特別な場があって、そこにおしゃれ心を発揮して
 いつもとは違った装いを楽しんで頂けたら素敵なのでは・・・」

 今回のドレスコードの設定には、<日頃の自分を開放する>、そういうお洒落の効用を伝えたいというオーナーのポリシーが込められていたのですね。

 「シャンソンはよくわからないので」という、時々耳にする言葉も同様かなと思うことがあります。
 わからないので足を踏み入れないのではなく、まずは実際に触れて頂けたらきっと印象が変わるはず、・・・私の挑戦です。

 数日前に客様からのこんな感想が届きました。

 「シャンソンのことはよく分からなかったのだけれど、あの迫力に引き込まれていきました。」
 「異世界への扉を開く刺激になりました。」
 「神経にビンビンときて、長編大作の小説を読み切ったような心地よい疲れが漂っています。」

 シャンソン初体験だった方も多くいらしたのですね。
 こんな風に感じて頂け、何より嬉しく思っています。
 お越し下さいました皆様、有難うございました。
 これからも更にパワーアップして行くよう精進して参ります。



このページのトップへ

秋のコンサートが始まります

   『パリジェンヌの秋』、明日です
 コンサート前日となりました。
 いつもより少しだけ口数が少なくなり、料理人が包丁を研ぐような気分で、身を正して、来るべき時を待つという心境に入り始めています。
 緊張しますが、実は醍醐味満点の時間なのかもしれません。

 「ファム&ウーボ20周年記念 
 松峰綾音訳詞コンサート『パリジェンヌの秋 ~femmes d’automne~』」

 長いタイトルのコンサート、4月の『をみなごに花びらながれ』からしばらくぶりの本番に、何だか心が浮き立ちます。

 セレクトショップ「ファム」の主催、コーディネートとあって、いつもとまた一味違ったテンポで、今日までの準備が進んできました。

 全体にお洒落で、ファッションのお店ならではコンサートにしたいというこだわりが細部からも伝わってきて、私にはとても新鮮で、新たな発見も色々あったのです。

 会場受付、ステージの装飾、衣装の雰囲気など、全てをトータルで考える雰囲気作り、視覚的にも楽しんで頂けることを狙っているのだと思われます。
 詳細な打ち合わせをしてきたのですが、私も教えて頂けない「当日のお楽しみ!」がいくつかあるようで、いつも全てを自分で準備してきた私にとっては、包みを開ける時を待つような楽しい感覚です。

 今回のコンサート、夏の終わりから秋への季節を背景として、曲の中にそれぞれの女性達の物語を描いて行こうというコンセプトですので、選曲にも色々工夫してみました。
 パリジェンヌ、パリマダムのお洒落で飛び切りエスプリの効いた世界を表出できたら素敵だと。
 そんなつもりで準備をしていると、すっかり自分がパリの街に居るような気がしてきて、一人芝居に没入していくような、うっとりと幸せな時間を過ごしています。

   中秋の名月
 一昨日の月はご覧になりましたか。
 私は京都の自宅のベランダから、かなり長い時間吸い込まれるように眺めていました。煌々として美しい名月でしたね。
渡月橋の満月
 ヨーロッパなどではこんなに冴えた月の夜は、不吉で、何か悪いことが起こると恐れられてきたと聞きます。
 名月を愛でて、思いを馳せ、そこに悠久の命を感じ取るなどという感覚は、独特な日本的な感性であるのでしょう。

 評論家小林秀雄氏の『考えるヒント』の中に、『お月見』という小編があったのを思い出しました。
 こんな書き出しです。

 京都の嵯峨で月見の宴をしていた。もっとも月見の宴というような大袈裟なものではなく、集まって一杯やったのが、たまたま十五夜の夕であったというような事だったらしい。平素、月見などには全く無関心な若い会社員たちが多く、そういう若い人らしく賑やかに酒盛りが始まったが、話の合い間に、誰かが山の方に目を向けると、これに釣られて誰かの目も山の方に向く。月を待つ想いの誰の心にもあるのが、いわず語らずのうちに通じ合っている。やがて、山の端に月が上ると、一座は、期せずしてお月見の気分に支配された。暫くの間、誰の目も月に吸寄せられ、誰も月の事しかいわない。

 この中に、スイス人が何人か混じっていたのですが、彼らはこの状況を異様に感じて、一変したと思える一座の雰囲気(お月見の気分)が、どうしても理解出来ず、「今夜の月には何か異変があるのか」と、怪訝な顔付きで質問したというのです。

 ここから、文章は日本的感性に言及されていきます。

 お月見の晩に、伝統的な月の感じ方が、何処からともなく、ひょいと顔を出す。取るに足らぬ事ではない、私たちが確実に身体でつかんでいる文化とはそういうものだ。文化という生き物が、生き育って行く深い理由のうちには、計画的な飛躍や変異には、決して堪えられない何かが在るに違いない。

そして

「意識的なものの考え方が変わっても、意識出来ぬものの感じ方は容易に変わらない」
「自分たちの感受性の質を変える自由のないのは、皮膚の色を変える自由がないのとよく似たところがある」

 という所感へと続いていきます。

 話が飛躍しますが、フランスの詩を音楽の力を借りながらも、日本語で表現しようとするシャンソンに関わる日々の作業は、こういう感性を包含しつつも、私のこれに向かうささやかな挑戦なのかもしれないと、ふと思いました。

 音楽の持つ普遍性や、日本語=言語の持つ究極の力を信じて、明日のコンサートもベストを尽くすつもりです。

   おまけのお話 お月見のダンゴ
 一昨日届いた「ファム」のオーナーからのほっこりとするメールです。

 兎が居る日本の月は独特で、中秋の名月。
 私も早く色々と準備に取り掛かりたいのに、今日は月を愛でる日。こどもにせがまれお団子を作り、ススキを飾って呑気に外で食べておりました。
さぁ、今から頑張るとします。


 私はお月見はしても、お月見ダンゴを作ったことありませんでした。
 仕事に向かう時のきりっとした眼差しが印象的な彼女の、この感覚が、とても素敵だと思います。

 明日、一緒にコンサート本番です。



このページのトップへ