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新しいシャンソンを新しい言葉に乗せて

   シャンソンの訳詞のつれづれに                      ~ 松峰綾音のオフィシャルブログへようこそ ~

* それぞれの3月11日 <その二>

 昨日掲載した記事、それぞれの3月11日 <その一>の続きを記します。 

     
   <茨城から ~ Yさんのメール ~ > 
 土浦に住むYさん、やはりとても大変な思いをなさっていたのですね。
 混乱時なのでメールも電話も、連絡は遠慮すべきと思っていたのですが、心配でたまらず、昨日メールでそっと無事を確かめたところ、すぐにお返事を下さいました。
 とても丁寧に鮮やかに、この日の状況を綴って下さって、手に取るように様子が思い描かれました。
 大変感銘を受け、勇気付けられる内容なので、本当は丸ごと是非ご紹介したいのですが、それはやはりご遠慮し、でも一部分だけでも抜粋させていただこうと思います。
    
              *   *   *   *

 私は仕事場で皆でお茶休憩をしているところでした。
横揺れがいつもより少し長いな、と感じているうちに、地面の底から何かが出てくるのではないかと思うくらい不穏な音とともに揺れが強くなっていきました。

 驚くというよりも「身の危険」を感じて皆で外に出ると、電線は激しく波打ち、隣のアパートのガラスがガタガタ言い、前のお宅の奥さんも外に出て庭にしゃがみこんでいました。
 地上では明らかに不穏な空気が身体を覆っているのに、空は穏やかできれいな青空だったのを覚えています。
 
            *  *  *  *

 橋を渡れば我が家です。
 橋は危ないと思いつつ、一刻も早く帰りたかったため、橋を上りました。
 途中ですれ違った若者の「橋はやっぱり揺れるな」と、余震をにおわすような言葉を聞かないふりをしながら自転車で猛スピードで橋を下っていくと、目の前に信じられない光景が広がっていました。
 晴れているはずなのに路面がずっと先まで濡れているのです。
 よくわからないまま、橋を渡り終えて家に近づいていくと更にひどい状況で、ブロック塀は崩れている家や、瓦が飛んでしまった家、窓ガラスの破片が道路に飛び散っている工場等々・・・。

 呆然としたまま我が家に辿り着くとアパートの前のアスファルトや電柱から泥水が噴出し、大量に流れ出ていました。路面が濡れていたのはそのせいでした。
 私は少し前のニュージーランド地震で起きたテレビの映像を思い出していました。
 「液状化現象」
 まさにそれが目の前に広がっていたのです。

           *  *  *  *


 この後もずっと続いて綴って下さっているのですが、一部を抜粋しながら、ご紹介させていただきました。
 Yさん。
 どれほど、恐ろしく不安な思いをなさったかが、文面から手に取るように分かりました。そしてきっと、今も不自由なことや、困難なことを沢山抱えていらっしゃるのでしょうね。ストレスも過労もたくさんたまってきていないか心配です。
 私は、子供の頃からのYさんを良く知っていますが、彼女はいつも感受性豊かに、そして、澄んだ眼差しで真直ぐにものを見ることのできる人です。そしてその眼差しはとても温かいです。
 このメールを読みながら、賢明な彼女はどんな局面もくじけることなく勇気と優しさを持って乗り切ってゆかれると思いました。それを心から祈りたいと思います。
   「停電の暗闇の中で、カーテンを開けてみると地上に明りはなくても夜空は結構明るくて、そんな、子どもの頃はわかっていたようなことも忘れていた自分に気づきました。」
 ・・・メールの最後に書いて下さったこのことばが胸に残ります。


 驚天動地の事態の前で、同じ時間を、たくさんの方たちが、色々な状況で色々な思いの中で過ごしていたことを改めて思います。一つ一つは小さな出来事かもしれませんが、でもそれぞれに共感でき、その中に誇らしく感じる大切なものが見える気がしています。

 本当に困難で、一人一人の真価が問われてゆくのは、むしろこれからでしょう。
 事態は簡単に収束されそうにありませんし、我慢と苦痛を強いられるこれからの長い時間の中で、どのように私たちは冷静に礼節を保ち続けてゆけるのか、これは難題に違いありません。
 
 もう既に、風評被害などによって、社会はかなり混乱をきたし始めていますが、だからこそ私たちが立ち返るべき場所を忘れないでいたいと、今強く願います。

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