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新しいシャンソンを新しい言葉に乗せて

   シャンソンの訳詞のつれづれに                      ~ 松峰綾音のオフィシャルブログへようこそ ~

卯月 つれづれ2

   4月の彩り・・・『歳時記』
 卯月4月、卯の花が咲く月と言うわけですが、卯の花はウツギのこと、ユキヤナギにも少し似ています。
卯の花1  卯の花2
 また、5月の、梅雨に先駆けて降る長雨(走り梅雨)のことを、『卯の花腐し(うのはなくたし)』などとも言いますが、長すぎる雨に打たれ、卯の花がしおれやがて朽ちてしまうことから、このように命名されているようです。

 季節は4月から、5月、6月へと細やかに渡されてゆくのですね。
 日本の美しい四季が織りなす繊細な感覚は、やはり素敵です。

 『歳時記』を久しぶりに手に取ってみました。何だか豊かな気持ちになれる気がして、私は『歳時記』を眺めるのが好きなのです。
 でも、こんなことを言うと・・・「俳句や短歌を詠まれるのですね」・・・・などと誤解されますので、めったに口外はしません。・・・、悲しいことに鑑賞と創作とはあくまでも別なので・・・。
 今朝もパラパラとページを繰っていたら、こんな素敵な俳句をみつけました。

   空は我を生みし蒼さや 花卯つ木  渡辺水巴 

 澄みきった深い蒼空、自然と共にある躍動感が感じられるような生き生きと若々しく力強い一句です・
 こういう言葉に出会うと元気が猛烈に湧きあがってきます。
 
   『色の手帳』と『フランスの色』
 「卯の花腐し」もその一例でしょうけれど、日本語には、雨、雲・・・のような自然現象や、草木、花鳥風月などの自然物を示す語彙が多言語と比べて断然豊富であるといわれます。
 四季の移り変わりがあり、その中で自然の変化を鋭敏に感じ取る感受性が培われて、更に、欧州の国々のように複数の言語を操る必要を免れてきたことも手伝って、日本語は語彙を増やし、磨かれてきたのでしょう。
 シャンソンに関わるようになって、以前よりもフランス語やフランス文化を身近に感じるようになっていますが、それでも日本語が繊細で豊かであることはフランス語の比ではないと・・・・大きな声では言えませんが、・・・思っています。

 『歳時記』のお話をしたついでに、私の愛読書をあと二冊ご紹介しますね。

 一冊は、『色の手帳 ~色見本と文献例でつづる色名ガイド 』(小学館発行)という本です。・・・こういう種類の本は、きっと他にも出版されているのではと思うのですが、私の持っているのは昭和62年版で、大いに年季が入っています。
色の手帳(小学館)
 色見本帳のようなものなのですが、微妙な色合いの違いが美しく印刷されていて、見ているだけでも楽しめますし、伝統色名から現代色名まで、語源や背景、文献例などもなかなか丁寧に説明されていて、色から、文化や文学を支える美意識が見えてくる気がしていて面白いです。
 ちょっと調べてみましたら、2002年に改定版が出版されていて、評価が高いようです。(ちなみに私の持っている昭和62年版は、全358色について記述していますが、改定版は500色に増えています)
 改定版の紹介にこんな一文が添えられていました。


 清少納言が『枕草子』に記した「あをいろ」や「むらさき」はどんな色だったのだろう。夏目漱石の「セピア」はどんな色だったのだろう。色の世界に想像の翼が広がります。


 例えば、赤系の色は74色取り上げられていて、そのうちの半数近く、ピンク系の色が紹介されていました。
 牡丹色 躑躅(つつじ)色 撫子(なでしこ)色 朱鷺(とき)色 薄紅梅 桃色 桜色 珊瑚色 ・・・・ピンク系は圧倒的に、草花を初めとする自然物の色合いをそのまま色名にしているものが多く、自然の一つ一つの色合いを、それだけが持つ独自なものとして認識する目が感じられます。
 私たちのDNAの中に流れているはずのこのような感覚を、日々の生活の中で鈍化させたくないなとしみじみ思ってしまいました。

 それでも、生活の変化と共に消滅してゆく色もあるのでしょうけれど。・・・朱鷺色が朱鷺の絶滅と共に消えてゆくように。でも嬉しい展開で、もう日本では目にすることが出来ないと思っていた朱鷺色は、今再び空を舞う朱鷺の羽に美しく蘇ってきましたね。
 フランス語に恨みがあるわけでは全くないのですが、フランス語だったらピンクはrose(ローズ)という一語しかなく、しかもrose は薔薇という意味でもあり、「では<ピンクの薔薇>は何と言うかと言うと<rose rose>です。」と、フランス語初歩コースの先生が説明をするのを聞いて、大体の生徒は「ふ~~ん」とちょっと勝ち誇ったような表情をするのが常です。
フランスの色(平凡社)
 「フランス語は世界最高の言語」と言われている割には語彙はそれほどでも・・・という驚きから、私もフランス語習得の道をスタートしたわけですが、そこで公平を期すために、もう一冊、『フランスの色』(コロナブックス編 2010年 平凡社)という本をご紹介してみたいと思います。

 で、早速、roseの項のページを開いてみると、18色載っていました。
 よく見ると、その中の三分の二は、例えば、ローズ・テ(薔薇紅茶のピンク)とか、ローズ・ソーモン(サーモンのピンク)とか、ローズ・ルノワール(ルノワールの絵のピンク)とか、ローズ・ベベ(赤ちゃんの肌の、或いは着るベビー服のピンク)とか、ローズ・ドラジェ(砂糖菓子のドラジェのようなピンク)・・・です。
 これらの色はローズ(ピンク)に、「~~のような」という形容詞でバリエーションを広げているのがわかります。
 色を識別する時の認識の違いがあるということで、なかなか興味深いです。
 
   翻訳の難しさ
 色だけを例にとっても、それぞれの国の言語には、このような差異があるわけですから、翻訳によって原語の生の感覚を生き生きと伝えると言う事はとても難しいことだと改めて感じます。
 語彙の豊富な言語を伝える時には、それの持つ的確な意味合いやそのものの知識を広げ了解させてゆく努力が要求されますし、反対に語彙が少なく、一語の使い方をその場や状況によって使い分けてゆく言語であれば、実生活の中で微妙にくみ取ってゆくような呼吸とか経験が要求されてくるのだと思います。

 シャンソンの訳詞の場面でも、こういう事は常に考えますし、まして詩なので、難関に行き当たる事も多いのですが、また改めて、このような話題を取り上げさせていただこうかなと思っています。


   速報!
 さて最後に、話はがらりと変わって。

 トントン拍子と言う言葉がありますが、思い立ってから決まるまで、ホントに早かったんです。
 実は、GWが明けたら、一週間ほど、パリに行ってこようかなと思います。
 パリのカフェ
 昨年からずっと慌ただしくしていたこともあり、夏になる前に、ぶらり一人旅でも、或いは友達と、などと何となく思っていたのですが、つい先日、友人とランチをした時、彼女も同じようなことを考えていたらしく、突然、意気投合して、じゃあご一緒にどうでしょう!という事になりました。
 ランチから数日、日取りもホテルも飛行機の手配も全て決定して、いつもなら、ゆっくりと旅行の行程など楽しみながら検討するのに、これぞ電光石火で、・・・行こうかなと思ってから、出発まで三週間の早業となりました。

 とっても楽しみです。
 彼女Mさんは、本業はバリバリのキャリアウーマンなのですが、お忙しく活躍の日々の合間に、お菓子教室も開いていらっしゃる方です。パリでお菓子教室をのぞいたり、色々な調理器具を購入するのが今回の旅行のメインということ。
シャンソンライブコンサート
 私はというと、パリに行くといつも、CD屋さんと楽譜屋さん巡りをするのが無上の楽しみ、お約束コースで、上手くいけばシャンソンコンサートを聴きに、後は河畔の散歩と、カフェでフランス人鑑賞かな、・・・・たぶん昼間は、「じゃあね!」とそれぞれで過ごす旅になりそうです。
 5月はフランスも花の季節、スズラン、リラ、薔薇が綺麗な頃かと思います。果たしてどうなりますか・・・・フランスの空気を沢山吸って、また、珍道中見聞記をお伝えしたいと思います。

 今日から休日ですね。
 楽しいGWをお過ごし下さいますように。


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