
台風一過、このところ秋晴れの爽やかな日が続いています。
さて、お待たせ致しました。
採薪亭演奏会の写真が届いてきましたので、これをご紹介しつつ、改めてコンサートのご報告させて頂きたいと思います。

静謐で動かし難い荘厳さを持つ東福寺大慧殿、お彼岸、中秋の名月の前日、そして第二部に朗読する『蜘蛛の糸』・・・物語の背景となる極楽の蓮池の情景やお釈迦様の姿なども自然と心に浮かんできて、いつも以上に襟を正す会場入りとなりました。

清められて塵一つなく、既に全ての準備が整えられた大慧殿で、音響や照明などの最終チェックをしながら、開場時間を待つ時、いつものように、コンサート直前の高揚感と集中力が溢れてきましたが、それと同時に祈りの場所の持つ穏やかな充足感もありました。
私と坂下さんのために用意して下さった控室は、仏様が何体も安置されており、見守って頂いているようで何とも有難く、また畏れ多くもあり、いつもよりお行儀よく静かに端座していたような気がします。
第一部 日本茜のドレスで

初めにあたって、『音は奏でる 言葉は囁く』のコンサートタイトルをまずは主催者である東福寺即宗院の杉井玄慎和尚様がご紹介下さいました。
耳を傾けて音を味わうこと、心を澄まして言葉を聞きとること、そして発すること・・・そのことの深い意味がお話の中からしみじみと伝わってきます。
『雨だれ』からスタート。
そしてこの日のサプライズ!
スペシャルゲストの和尚様に、コンサートテーマに即して書かれたご自身の文章を朗読して頂きました。

『狸の独り言』と名付けた3つの文章で、<雨だれがやがて勢いよく樋を伝い、風の音と合わさって自然のハーモニーを奏でる>という様子を擬音を交えて楽しく表現して下さいました。
会場が盛り上がる中、雨に因(ちな)んだ曲を数曲ご披露。

その後、第一部最後には採薪亭特別バージョンとして、私がアレンジしたシャンソン風『山寺の和尚さん』で締めくくりました。
途中から和尚様にも再び加わって頂き、狸が腹鼓みを打つ音を模して、木魚を叩いて頂きました。
おそらく和尚様も初体験の演奏、私もきっと最初にして最後のこの曲のご披露になったのではと思います。
音楽は心楽しむもの、皆で心併せて奏でるもの・・・最初のご挨拶の言葉を体現した、客席とステージとが一体となったひと時でした。
休憩に入る前にドレスの説明も。
実は今回のこのドレスは、着物の反物から作ったものなのです。

日本茜という植物から染めた絹織物。
茜色と言っても真っ赤ではない、夕暮れ時のほんのりと染まる空の色、鴇色にも近い何とも言えない柔らかく上品な色彩。
東福寺にご縁の深い染織作家の上原晴子さんが染められたもので、これを拝見した折に私は一目で気に入ってしまい、この日のコンサートで是非ともドレスにして着用できたらと思ったのでした。
仲良しの東京のデザイナー(「サロン・ド・ハナ」のオーナー)と散々苦心して考えたデザインです。
着物の生地は本来直線裁ちするように織られているものですので、それでドレスの曲線を出すのはとても難しいのだそうです。
リボンのような飾りは帯結びに見立てて、中の花芯は帯締めで演出してみました。

この日は上原さんもお客様でいらして下さり、皆様の前でご紹介。
素敵なお着物姿です。
サプライズ満載の第一部を終えて、休憩時間に入りました。
休憩は約一時間、このように贅沢に時間を取れないのが一般的なコンサートの実情ですが、この採薪亭演奏会はまさにヨーロッパの音楽会のように、ワイン片手にゆっくりと寛ぐというコンセプトを取り入れているようです。

後援者である京都の老舗「前田珈琲」が出張してサーブして下さる飛び切り美味しいケーキと珈琲、サンドウィッチ、ワインの数々。
お客様も楽しそうに取り分けて下さいました。
第二部 『蜘蛛の糸』の静寂から
芥川龍之介の作品『蜘蛛の糸』の朗読からスタート。
読んだことがある方が多いのではと思われるお馴染みの物語、勧善懲悪を語る教訓的なお話と思われがちですが、実際読んでみるとそうとも言えず、身につまされたり、罪人に同情したり、人というものの性を思い知らされたり、なかなか複雑な思いに駆られてきます。

「改めて聴いて心に衝撃を受けた」「朗読で聴くと一語一語が胸に響き深く理解できる」「蜘蛛の糸が見えてきた」等々、今回のコンサートの中で一番反響が多く寄せられました。
私自身は、以前は主人公に感情移入していたのですが、今回は朗読しながら、男が地獄に再び落ちてしまった後のお釈迦様の悲しげなため息と、その背景にあるどこまでも美しく薫り高く香っている極楽の蓮池の風情が心に沁みてきました。
しかし極楽の蓮池の蓮は、少しもそんな事には頓着致しません。その玉のような白い花は、御釈迦様の御足のまわりに、ゆらゆらうてなを動かして、そのまん中にある金色の蕊(ずい)からは、何とも云えない好い匂が、絶間なくあたりへ溢れて居ります。極楽ももう午(ひる)に近くなったのでございましょう。
そして『言葉は囁く」のテーマのもと、二部は進みます。
和気藹々と歌い語り・・・・。

坂下さんがにっこりと微笑みながらトークを聞いていたり・・・・。
最後は客席の皆様にも加わって頂きたくて、いつもの『たびだち』を合唱しました。

初めていらしたお寺関係のお客様も多くいらしたのに、いつも以上に大きな声で楽しげに唱和して下さって、本当に嬉しいコンサートの締めくくりとなりました。
「音と言葉」が素敵に響いたひと時、お越しくださいましたお客様、応援して下さいました皆様に改めて感謝申し上げます。
さて、お待たせ致しました。
採薪亭演奏会の写真が届いてきましたので、これをご紹介しつつ、改めてコンサートのご報告させて頂きたいと思います。

静謐で動かし難い荘厳さを持つ東福寺大慧殿、お彼岸、中秋の名月の前日、そして第二部に朗読する『蜘蛛の糸』・・・物語の背景となる極楽の蓮池の情景やお釈迦様の姿なども自然と心に浮かんできて、いつも以上に襟を正す会場入りとなりました。

清められて塵一つなく、既に全ての準備が整えられた大慧殿で、音響や照明などの最終チェックをしながら、開場時間を待つ時、いつものように、コンサート直前の高揚感と集中力が溢れてきましたが、それと同時に祈りの場所の持つ穏やかな充足感もありました。
私と坂下さんのために用意して下さった控室は、仏様が何体も安置されており、見守って頂いているようで何とも有難く、また畏れ多くもあり、いつもよりお行儀よく静かに端座していたような気がします。
第一部 日本茜のドレスで

初めにあたって、『音は奏でる 言葉は囁く』のコンサートタイトルをまずは主催者である東福寺即宗院の杉井玄慎和尚様がご紹介下さいました。
耳を傾けて音を味わうこと、心を澄まして言葉を聞きとること、そして発すること・・・そのことの深い意味がお話の中からしみじみと伝わってきます。

そしてこの日のサプライズ!
スペシャルゲストの和尚様に、コンサートテーマに即して書かれたご自身の文章を朗読して頂きました。

『狸の独り言』と名付けた3つの文章で、<雨だれがやがて勢いよく樋を伝い、風の音と合わさって自然のハーモニーを奏でる>という様子を擬音を交えて楽しく表現して下さいました。
会場が盛り上がる中、雨に因(ちな)んだ曲を数曲ご披露。

その後、第一部最後には採薪亭特別バージョンとして、私がアレンジしたシャンソン風『山寺の和尚さん』で締めくくりました。
途中から和尚様にも再び加わって頂き、狸が腹鼓みを打つ音を模して、木魚を叩いて頂きました。
おそらく和尚様も初体験の演奏、私もきっと最初にして最後のこの曲のご披露になったのではと思います。
音楽は心楽しむもの、皆で心併せて奏でるもの・・・最初のご挨拶の言葉を体現した、客席とステージとが一体となったひと時でした。
休憩に入る前にドレスの説明も。
実は今回のこのドレスは、着物の反物から作ったものなのです。

日本茜という植物から染めた絹織物。
茜色と言っても真っ赤ではない、夕暮れ時のほんのりと染まる空の色、鴇色にも近い何とも言えない柔らかく上品な色彩。
東福寺にご縁の深い染織作家の上原晴子さんが染められたもので、これを拝見した折に私は一目で気に入ってしまい、この日のコンサートで是非ともドレスにして着用できたらと思ったのでした。
仲良しの東京のデザイナー(「サロン・ド・ハナ」のオーナー)と散々苦心して考えたデザインです。
着物の生地は本来直線裁ちするように織られているものですので、それでドレスの曲線を出すのはとても難しいのだそうです。
リボンのような飾りは帯結びに見立てて、中の花芯は帯締めで演出してみました。

この日は上原さんもお客様でいらして下さり、皆様の前でご紹介。
素敵なお着物姿です。
サプライズ満載の第一部を終えて、休憩時間に入りました。
休憩は約一時間、このように贅沢に時間を取れないのが一般的なコンサートの実情ですが、この採薪亭演奏会はまさにヨーロッパの音楽会のように、ワイン片手にゆっくりと寛ぐというコンセプトを取り入れているようです。


後援者である京都の老舗「前田珈琲」が出張してサーブして下さる飛び切り美味しいケーキと珈琲、サンドウィッチ、ワインの数々。
お客様も楽しそうに取り分けて下さいました。
第二部 『蜘蛛の糸』の静寂から
芥川龍之介の作品『蜘蛛の糸』の朗読からスタート。
読んだことがある方が多いのではと思われるお馴染みの物語、勧善懲悪を語る教訓的なお話と思われがちですが、実際読んでみるとそうとも言えず、身につまされたり、罪人に同情したり、人というものの性を思い知らされたり、なかなか複雑な思いに駆られてきます。

「改めて聴いて心に衝撃を受けた」「朗読で聴くと一語一語が胸に響き深く理解できる」「蜘蛛の糸が見えてきた」等々、今回のコンサートの中で一番反響が多く寄せられました。
私自身は、以前は主人公に感情移入していたのですが、今回は朗読しながら、男が地獄に再び落ちてしまった後のお釈迦様の悲しげなため息と、その背景にあるどこまでも美しく薫り高く香っている極楽の蓮池の風情が心に沁みてきました。
しかし極楽の蓮池の蓮は、少しもそんな事には頓着致しません。その玉のような白い花は、御釈迦様の御足のまわりに、ゆらゆらうてなを動かして、そのまん中にある金色の蕊(ずい)からは、何とも云えない好い匂が、絶間なくあたりへ溢れて居ります。極楽ももう午(ひる)に近くなったのでございましょう。
そして『言葉は囁く」のテーマのもと、二部は進みます。
和気藹々と歌い語り・・・・。


坂下さんがにっこりと微笑みながらトークを聞いていたり・・・・。
最後は客席の皆様にも加わって頂きたくて、いつもの『たびだち』を合唱しました。


初めていらしたお寺関係のお客様も多くいらしたのに、いつも以上に大きな声で楽しげに唱和して下さって、本当に嬉しいコンサートの締めくくりとなりました。
「音と言葉」が素敵に響いたひと時、お越しくださいましたお客様、応援して下さいました皆様に改めて感謝申し上げます。


