
高瀬川の桜
4月6日(土)、「綾音 達人夜話」第4夜、無事終了致しました。
思えば、昨年4月7日に第一夜がスタートし、四季を追って様々なゲストの方と楽しくお話を交わしてきました。
第一夜も桜満開の中でしたし、そして今回の締めくくりも高瀬川を飾る美しい桜に包まれていました。

余りにも麗らかな陽射しで、格好のお花見日和でしたので、少し早めに家を出て会場に向かいました。
眩しい光の中で咲き誇る桜。
お花見の人達で賑わう四条通りを縫うように歩き、木屋町通りに出ます。
高瀬川に沿って桜。


高瀬川は角倉了以・素庵親子によって開削された人工の川、全長約11㎞の運河です。二条大橋の南で鴨川から取水し、木屋町通り沿いの西側を南下し、やがて再び鴨川に合流。
水深が約30㎝の浅瀬ですが、流れが澄んで美しく、白鷺や鴨がゆったりと遊び、美しく木々の影を川底に映しています。

会場のギャラリー「四季AIR」の前に到着しました。
ケーキのお人形を飾ってみました

既にご紹介したケーキのお人形たちですが、演台に並べてみました。
パティシエの西原さんとの対談にエールを送ってくれているようで、とても可愛らしく、お客様からも「美味しそう!」の声が。
西原さんのお店の絶品「伝説のアップルパイ」のお話も熱く語りましたので、一番人気はアップルパイのお人形だったかもしれません。

会場の設えをしながら一枚。
実は、気がついたら、ゲストとの対談風景も撮り損ね、この日はご紹介できる写真が殆どありませんでした。
「食育」について
満席の参加者、和気藹々とした、そして期待に満ちた雰囲気の中で、パティシエ 西原金蔵さんとの対談が始まりました。
おおらかで温かいお人柄、ソフトな語り口でいらっしゃるのですが、そこから溢れ出る誠実さと、毅然と揺るぎない信念・自信、それらに裏打ちされたお話の一つ一つが胸に沁みてきました。
あっという間に定刻の80分が過ぎて・・・・沢山ご紹介したいお話はあるのですが、「食育」についての次のような言葉が特に心に残りました。
今、お菓子に関わる仕事についていることの根底には、一つには幼少の頃に受けた「食育」があるのではないかと思います。
兼業農家だったので、その季節の収穫をいつも食べさせてもらっていました。
初物を食べるときには、必ず作物の出来不出来などの話題が食卓に上りました。何が美味しいのか、どのように美味しいのか、家長であるおじいちゃんの話してくれる、食べ物への様々な受け止め方が、自然に心に入っていたのかもしれません。
食べるということへの基本的なマナーや、味覚の感じ取り方や、それをいかに表現するかといった、自分にとっての「味覚の土台」の形成だった気がします。
子供の頃の思い出としては、おばあちゃんが年に数回作ってくれた「岩おこし」の美味しさ、「おこし」といっても少し柔らかく何とも言えない甘さで、お菓子に惹かれた幸せな原体験になっています。
もう一つ。
フランス留学で出会ったアラン・シャペル氏から学んだ「食育」が、現在の自分のベースになっていると言って過言ではありません。
「ルセットを超えるもの」ということ・・・・ルセットとは、調合(レシピ)のことですが、お菓子は科学と言われるぐらい、「決められたことを決められたように再現するというのがお菓子作りである」という考え方がベースにあります。アラン・シャペル氏は「ルセットを超えるもの」という料理哲学を持っておられたのです。
シャペル氏からは「その基本から抜け出せなければルセットを超えることはできない」と、いつも言われました。
いつもその時その時の最高の素材を見つけ、その素材を生かし得る最高の方法を探ってゆくこと。
自然体で自分が真に美味しいと思えるお菓子を作ること。
食べ物の中にある思い出を大切にすること。
そんな多くの事を彼から学んだのです。
誰のために作るのか。その人のためにどういった食材がいいか、どのように
して、良い素材を手にするのか。食べてもらう人と時をいつも意識して、食材に向き合う、厨房にある西原さんの真摯な眼差しが浮かんでくるようでした。
お祖母様の作って下さった「岩おこし」の飛び切り美味しい幸せな味をきっとずっと楽しく想い描きながら、お菓子に挑戦していらっしゃったのでしょうか。
「食べ物の中にある思い出を大切にする」ということは、そういう「幸せ」を再現することなのでしょうか。
「こうするともっと美味しくなるかもしれない」・・・・ワクワクするような好奇心、探究心と、素材への愛情、供する相手への愛情が、お菓子作りのエネルギーの源になっているのだと感じました。
対談は多岐に渡り、途中シャンソンの話に言及して、歌も披露しながら進めていきました。
すべてをご紹介できないのは残念ですが、素敵な4月の夕べとなりました。
「言葉を超えるもの」をメインテーマとした、この「綾音 達人夜話」のシリーズを終えるにあたり、今、思うのは、究極的には、あらゆるジャンルに「共通するもの」があるのではという事です。
・・・食べ物であろうと、言葉であろうと、音楽であろうと、哲学、演劇、・・・・あらゆる素材において、その奥にある「目には見えないもの」、でも「生き生きと輝き続け躍動するもの」を掬い出す、対象への慈しみをベースとした柔軟で創造的なエネルギーこそが、真に良きものを見出だし、生み出すのではないかと。
そして更にそのベースに、揺るぎなく立つ自分(風土、育ち方、習慣、歴史、感受性、人としての真の教養、などに裏打ちされていくのでしょうけれど)があることが大切なのではないでしょうか。
「グローバル」であることの本当の意味を、考えることのできた貴重な経験に改めて感謝しています。

写真は夜話が終わった後のワインパーティーで。
すっかりリラックスしたツーショットです。
帰路に向かう道。
夜桜、水面に映る桜花、白く浮かび上がる花びら。

桜の季節が、今、美しく流れて行きます。
4月6日(土)、「綾音 達人夜話」第4夜、無事終了致しました。
思えば、昨年4月7日に第一夜がスタートし、四季を追って様々なゲストの方と楽しくお話を交わしてきました。
第一夜も桜満開の中でしたし、そして今回の締めくくりも高瀬川を飾る美しい桜に包まれていました。

余りにも麗らかな陽射しで、格好のお花見日和でしたので、少し早めに家を出て会場に向かいました。
眩しい光の中で咲き誇る桜。
お花見の人達で賑わう四条通りを縫うように歩き、木屋町通りに出ます。
高瀬川に沿って桜。



高瀬川は角倉了以・素庵親子によって開削された人工の川、全長約11㎞の運河です。二条大橋の南で鴨川から取水し、木屋町通り沿いの西側を南下し、やがて再び鴨川に合流。
水深が約30㎝の浅瀬ですが、流れが澄んで美しく、白鷺や鴨がゆったりと遊び、美しく木々の影を川底に映しています。

会場のギャラリー「四季AIR」の前に到着しました。
ケーキのお人形を飾ってみました

既にご紹介したケーキのお人形たちですが、演台に並べてみました。
パティシエの西原さんとの対談にエールを送ってくれているようで、とても可愛らしく、お客様からも「美味しそう!」の声が。
西原さんのお店の絶品「伝説のアップルパイ」のお話も熱く語りましたので、一番人気はアップルパイのお人形だったかもしれません。

会場の設えをしながら一枚。
実は、気がついたら、ゲストとの対談風景も撮り損ね、この日はご紹介できる写真が殆どありませんでした。
「食育」について
満席の参加者、和気藹々とした、そして期待に満ちた雰囲気の中で、パティシエ 西原金蔵さんとの対談が始まりました。
おおらかで温かいお人柄、ソフトな語り口でいらっしゃるのですが、そこから溢れ出る誠実さと、毅然と揺るぎない信念・自信、それらに裏打ちされたお話の一つ一つが胸に沁みてきました。
あっという間に定刻の80分が過ぎて・・・・沢山ご紹介したいお話はあるのですが、「食育」についての次のような言葉が特に心に残りました。
今、お菓子に関わる仕事についていることの根底には、一つには幼少の頃に受けた「食育」があるのではないかと思います。
兼業農家だったので、その季節の収穫をいつも食べさせてもらっていました。
初物を食べるときには、必ず作物の出来不出来などの話題が食卓に上りました。何が美味しいのか、どのように美味しいのか、家長であるおじいちゃんの話してくれる、食べ物への様々な受け止め方が、自然に心に入っていたのかもしれません。
食べるということへの基本的なマナーや、味覚の感じ取り方や、それをいかに表現するかといった、自分にとっての「味覚の土台」の形成だった気がします。
子供の頃の思い出としては、おばあちゃんが年に数回作ってくれた「岩おこし」の美味しさ、「おこし」といっても少し柔らかく何とも言えない甘さで、お菓子に惹かれた幸せな原体験になっています。
もう一つ。
フランス留学で出会ったアラン・シャペル氏から学んだ「食育」が、現在の自分のベースになっていると言って過言ではありません。
「ルセットを超えるもの」ということ・・・・ルセットとは、調合(レシピ)のことですが、お菓子は科学と言われるぐらい、「決められたことを決められたように再現するというのがお菓子作りである」という考え方がベースにあります。アラン・シャペル氏は「ルセットを超えるもの」という料理哲学を持っておられたのです。
シャペル氏からは「その基本から抜け出せなければルセットを超えることはできない」と、いつも言われました。
いつもその時その時の最高の素材を見つけ、その素材を生かし得る最高の方法を探ってゆくこと。
自然体で自分が真に美味しいと思えるお菓子を作ること。
食べ物の中にある思い出を大切にすること。
そんな多くの事を彼から学んだのです。
誰のために作るのか。その人のためにどういった食材がいいか、どのように
して、良い素材を手にするのか。食べてもらう人と時をいつも意識して、食材に向き合う、厨房にある西原さんの真摯な眼差しが浮かんでくるようでした。
お祖母様の作って下さった「岩おこし」の飛び切り美味しい幸せな味をきっとずっと楽しく想い描きながら、お菓子に挑戦していらっしゃったのでしょうか。
「食べ物の中にある思い出を大切にする」ということは、そういう「幸せ」を再現することなのでしょうか。
「こうするともっと美味しくなるかもしれない」・・・・ワクワクするような好奇心、探究心と、素材への愛情、供する相手への愛情が、お菓子作りのエネルギーの源になっているのだと感じました。
対談は多岐に渡り、途中シャンソンの話に言及して、歌も披露しながら進めていきました。
すべてをご紹介できないのは残念ですが、素敵な4月の夕べとなりました。
「言葉を超えるもの」をメインテーマとした、この「綾音 達人夜話」のシリーズを終えるにあたり、今、思うのは、究極的には、あらゆるジャンルに「共通するもの」があるのではという事です。
・・・食べ物であろうと、言葉であろうと、音楽であろうと、哲学、演劇、・・・・あらゆる素材において、その奥にある「目には見えないもの」、でも「生き生きと輝き続け躍動するもの」を掬い出す、対象への慈しみをベースとした柔軟で創造的なエネルギーこそが、真に良きものを見出だし、生み出すのではないかと。
そして更にそのベースに、揺るぎなく立つ自分(風土、育ち方、習慣、歴史、感受性、人としての真の教養、などに裏打ちされていくのでしょうけれど)があることが大切なのではないでしょうか。
「グローバル」であることの本当の意味を、考えることのできた貴重な経験に改めて感謝しています。

写真は夜話が終わった後のワインパーティーで。
すっかりリラックスしたツーショットです。
帰路に向かう道。
夜桜、水面に映る桜花、白く浮かび上がる花びら。

桜の季節が、今、美しく流れて行きます。


