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新しいシャンソンを新しい言葉に乗せて

   シャンソンの訳詞のつれづれに                      ~ 松峰綾音のオフィシャルブログへようこそ ~

『たたかう植物 - 仁義なき生存戦略』

   ちょっと良い話
 このコロナ禍の中、トヨタ自動車の健闘ぶりが話題になっていますが、社員に向けて呼びかけた社長豊田章男氏の言葉が心に強く残りました。

 目の前のやるべきことに集中しよう!
 「先が見えない不安」に対し、真剣に取り組み、進めていけることを、全力で進めていきたい

 ネガティブの連鎖は、物事を悪くするばかり。
 深刻にならずに、真剣に。
 みんなで助け合って、感謝し合おう。
 こんな時だから、無理にでも笑顔になって乗り越えてゆこう。

 私も、一旦、ネガティブのるつぼにはまると、意欲が萎えて、目前の難問に向き合う勇気がなくなり、その言い訳のように、「深刻を装う」ことがある気がします。それは、逃れようとする自分へのストレス、怠惰のうしろめたさなのかもしれません。
 現実から目をそらさず真剣に取り組む勇気をいつも持っていたいです。
 そして、いつでも自然な笑顔でいられることは究極の聡明さなのだと刻んでいたいです。

   『たたかう植物 -仁義なき生存戦略』
 先ごろ読んだ、稲垣栄洋氏の著書(ちくま新書2015年刊)がとても興味深かったので、ご紹介したいと思います。
たたかう植物 植物についての専門書を読むことはこれまで殆どありませんでしたし、ただ漠然と、「植物は癒される」「動物と比べれば、植物は争いのない世界に生きる平和の象徴のようだ」と思ってきましたが、この書には、実はそんなことはなくて、「弱肉強食、適者生存の法則は植物の世界であっても何一つ変わらないのだ」と指摘されています。
 植物は熾烈な生き残りをかけて闘っている、地下における過酷な「バトルフィールド」が繰り広げられているという、「植物vs植物」から始まり、更にそれは、vs環境、vs病原菌、vs昆虫、vs動物、vs人間へと言及されてゆきます。

 6章に分かれたそれぞれに、具体的な植物の生態と「生存戦略」が様々に紹介されていてとても興味深く読みました。
 その全てをご紹介することはできませんが、たとえば、ドングリ。
 
 ドングリは「種子を散布するために種子そのものを動物に食べさせて利用するという荒業を行う植物」。
 秋になるとリスやネズミが冬の間のエサにするためドングリを集めにきます。
りす
 ドングリはクヌギやコナラなどの種子で、リスやネズミに食べられてしまいますが、運ばれて食べ残されたり、隠し場所を忘れられた一部が春になると芽を出すのです。
 ただし、小動物たちがお腹一杯になって食べ残すようにと、たくさんのドングリを作ればエサが豊富になり過ぎ、リスやネズミそのものの数を増やしてしまうことになります。
 そうなると、ドングリは食べ尽くされてしまうわけで、そこで、ドングリの戦略は、実をたくさん作る「生り年」と少しだけ作る「裏年」を設けたというわけです。庭にあった柿の木や梅の木を、お年寄りたちが「今年は裏年で実が少ない」と話していたことは、子供の頃によく耳にしましたたが、天候や肥料のためだけではなく、実はこのような巧みな自然界の調整だったとは全く知りませんでした。

 もう一つ。
 雑草の「生存戦略」についての文章も面白く読みました。
 雑草は強靭だと思っていましたが、筆者は、さにあらず、他の植物との競争に負けたすこぶる弱い植物なのだと指摘します。
スミレ そのため強い植物が侵入してこないような条件の悪い場所・・・乾燥地や肥料の少ない道端だったり、踏まれるあぜ道や草取りされる畑だったり・・・の逆境にあえて生存しようとしたのだそうです。
タンポポ 雑草はいざというときに備えて、地中に無数の種を準備しており、草取りされたり踏まれたりすると土がひっくり返り、地中にあった種が表面に出て光が当たる、それをチャンスととらえて我れ先にと芽を出すのです。他の植物が土の中で水分がないと発芽しないのとは逆に、「光発芽性」ということで、雑草にとっては逆境こそが順境ということになるのでしょう。

 これに加えて、筆者は、日本人だけが、「雑草」にある種の愛着を持ち、「雑草のように逞しく」、「雑草魂」に感嘆して、あっ晴れと拍手を送る稀有な民族だと指摘しています。
 アメリカの雑草学会は、雑草は「人類の活動と幸福・繁栄に対して、これに逆らったり、妨害したりするすべての植物」と定義していますし、自然は、人と相対するもの、征服すべきものという感覚を持っているとはよく言われることですが、日本においては、これとは異なり、自然への恩恵と畏敬、そしてその対極にある畏怖・脅威の念とを併せ持ち、共に受け入れ、共存していく、そのような感覚を持っているからでしょうか。

 あとがきに筆者は「植物は、生存戦略として、本来みずからの敵である生物と、双方に利益のある「共存関係」にたどり着いたのではないか」と述べています。
 それに比して、「人類は、世界中の生物を、地球環境を、征服し尽くそうとしている」、「太古の植物が、炭酸ガスを吸収して酸素を産生し、さらにオゾン層が生命体を生かすための砦となった。そうして作られた現在の地球、地球環境の生態系を人類が壊滅させようとする方向へと進んでいるのではないか」という警鐘を鳴らして、この書は締めくくられています。

 ダイナミックな植物のドラマ、物語を読んでいるような気がしてきました。

 植物の進化と生存の在り方を解明しながら、独自な見解から人類の叡智の在り方を示唆していて、とても興味深かったです。
 よろしかったら手に取ってお読みになってみてください。


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