
お陰様で3月27日の山手ゲーテ座でのコンサートも無事終了致しました。今から思えば、まさにコロナ感染の谷間だった気がします。
安堵感の中で一週間ぼんやりしていましたら、不測の事態でも?と、ご心配をおかけしてしまったようですが、何事もなくとても元気で過ごしております。
写真やDVDなども届いて参りました。
20日の京都公演と27日の横浜公演の模様を今日はご報告したいと思います。
会場の力
横浜公演に来られたお客様から村上春樹氏のこんな言葉を引用したご感想を頂きました。
自分の心だと思っているのは、心全体のうちのほんの一部分にすぎない。残りの領域は手つかずで、未知の領域として残されています。
でも、自分を本当に動かしているのは、その残された心なんです。
意識や論理じゃなくて、もっと広い、大きい心です。
じゃあ、その心という未知の領域を、どうやって探り当てればいいのか。その役割を果たしてくれるものの一つが物語です。
心と意識の間にある隙間を埋めていくのが小説・文学の役割です。
・・・・・
月のかそけき光が静かに地上を包み、様々な物語が繰り広げられる。
『月の庭』はまさに心と意識のすき間を埋めて行く感覚的作業のような気がしています。
今回のコンサートはそれを支えてくれる会場にこだわりました。
京都は文化博物館別館ホール、辰野金吾氏設計による明治期の近代建築の粋を集めた威風堂々とした建物。横浜はポール・サルダ設計の山手ゲーテ座ホール、西欧化の先駆けとなった演劇・音楽の殿堂。
両コンサートとも見守ってくれた私の友人は、「京都では柔らかい優しい月光の光が見えて、横浜では冷ややかで鋭い光で射抜かれた気がする」と詩的な印象を伝えてくれました。
会場が後押ししてくれる不思議な力って確かにあって、友人と同様の感覚を私自身ステージに立った時に感じた気がします。

今回のプログラムは、そんな思いを込めて、こんなデザインにしてみました。
二種類作成し、「お好きなほう」を受付で差し上げたのですが。
京都文化博物館コンサート

紫色の光の中で「月の庭」が出現していきます。今回のイメージカラーは青と紫。
第二部は黒の衣装。この写真は「黒衣聖母」を朗読している場面です。

このような「経本仕立て」にして、読み進むにつれてはらりはらりと落ちていく趣向です。
実はこれがとても好評でした。
「『黒衣聖母』の鬼気迫る内容にこの落ちていくタイミングがぴったり溶け込んで、怖かった」、「私も買いたいからこの折本の販売元を教えて」と言われました。
経本の形に折ったのは、友人のアドバイスによるもので、江戸時代の逸話の背景に合うのではと自分で作ったものなのです。
山手ゲーテ座コンサート
いつも私のコンサート写真を撮影して下さっている沢木瑠璃さんに今回もお願いすることができました。写真を追いながら横浜公演のご報告を致します。
ゲーテ座ホール桜満開。眩しい日差しにはらはらと舞う桜が美しかったです。

受付には『紋次郎物語』のご案内をしました。
「プレゼントにしたいから」と何冊もお求めくださる方もいらして、嬉しいものですね。紋次郎も横浜の皆様にもかわいがってもらえて本当に幸せ者です。

「ファンクラブの入会申し込み」・・・Amical AYANEというファンクラブが実は昨年末に発足したのです。
京都を中心に私の活動を応援して下さる有志の皆様で作ってくださった会、
このことはまだ発表していませんでしたので、今回のコンサートが初お目見え。これについては、また改めてご紹介致したいと思っています。

客席は、密を避け、間隔を広く取っていますが、いらした皆様には安心感がありますし、ゆったりと座って頂けたのではと思います。

落ち着いて舞台に集中出来る素敵なホールです。
「会場も程よい広さで、味わい深い良い場所でしたね。
磨かれた床に映ったドレスが、夜の海に映る月光のように見えた時は感動しました。」とのカメラマンの沢木さんの言葉。
その様子を写真に素敵に収めて下さいました。
第二部のテーマは「祈り」、黒のイメージです。

「汝の祈祷 神々の定めたまふ処を動かすべしと望むなかれ」
『黒衣聖母』のテーマは、この時節には身につまされて重い痛みを心に感じますが、でもだからこそ、ひりひりとした感覚の中でしっかりと受け止められる主題なのかもしれません。
さすが芥川龍之介の筆致は迫りくるものがあり、聴く方にとっては刃が差し込まれるような衝撃があると思うのですが、読んでいる私自身にも言葉自体の持つエネルギーがそのままブーメランのように心に戻ってきて、放心状態のようになるのです。エネルギーを吸い取られるような,魔的な感覚というのでしょうか。言葉を発することって、そういう真剣勝負の要素を含んでいるのかもしれません。

横浜公演限定で、後半コーラスが加わりました。何年ぶりかで歩さんの登場。久しぶりとは思えないほど息がぴったりでした。
裏話。
東京と京都、コロナも邪魔してなかなか会って練習ができませんでしたので、zoomを使ってのリモートレッスンで急場をしのぎました。窮すれば通ず。ただ微妙に時差が生じ、やまびこのように遅れて歌が届くのには難儀しました。でも本番はその分、感慨深かったです。
そしてアンコール。

客席の表情もうっすらと見えます。久しぶりで人と会え、人のぬくもりを感じた時間でした。
じかに話す、語る、歌うってやはり何ものにも代えがたい素敵で大切なことだと思いました。声を発するその熱量が客席に届いて、同じような親和感を持ってこちらに戻ってきます。
大げさな物言いかもしれませんが、人が生きるって本来そういうことなのではないでしょうか。
まだしばらく今の状況は続き、それに対応するコミュニケーションの取り方もきっと生まれてくるのでしょうけれど、それにしても早く落ち着いて、普通のライヴが普通に開催される日がくるように祈るばかりです。

一年半、延期したコンサートがこうして実現できました。
励まして下さり、力を貸してくださいました多くの皆様、ご来場下さいましたお客様に心から感謝申し上げます。
ありがとうございました。
安堵感の中で一週間ぼんやりしていましたら、不測の事態でも?と、ご心配をおかけしてしまったようですが、何事もなくとても元気で過ごしております。
写真やDVDなども届いて参りました。
20日の京都公演と27日の横浜公演の模様を今日はご報告したいと思います。
会場の力
横浜公演に来られたお客様から村上春樹氏のこんな言葉を引用したご感想を頂きました。
自分の心だと思っているのは、心全体のうちのほんの一部分にすぎない。残りの領域は手つかずで、未知の領域として残されています。
でも、自分を本当に動かしているのは、その残された心なんです。
意識や論理じゃなくて、もっと広い、大きい心です。
じゃあ、その心という未知の領域を、どうやって探り当てればいいのか。その役割を果たしてくれるものの一つが物語です。
心と意識の間にある隙間を埋めていくのが小説・文学の役割です。
・・・・・
月のかそけき光が静かに地上を包み、様々な物語が繰り広げられる。
『月の庭』はまさに心と意識のすき間を埋めて行く感覚的作業のような気がしています。
今回のコンサートはそれを支えてくれる会場にこだわりました。
京都は文化博物館別館ホール、辰野金吾氏設計による明治期の近代建築の粋を集めた威風堂々とした建物。横浜はポール・サルダ設計の山手ゲーテ座ホール、西欧化の先駆けとなった演劇・音楽の殿堂。
両コンサートとも見守ってくれた私の友人は、「京都では柔らかい優しい月光の光が見えて、横浜では冷ややかで鋭い光で射抜かれた気がする」と詩的な印象を伝えてくれました。
会場が後押ししてくれる不思議な力って確かにあって、友人と同様の感覚を私自身ステージに立った時に感じた気がします。

今回のプログラムは、そんな思いを込めて、こんなデザインにしてみました。
二種類作成し、「お好きなほう」を受付で差し上げたのですが。
京都文化博物館コンサート

紫色の光の中で「月の庭」が出現していきます。今回のイメージカラーは青と紫。
第二部は黒の衣装。この写真は「黒衣聖母」を朗読している場面です。

このような「経本仕立て」にして、読み進むにつれてはらりはらりと落ちていく趣向です。
実はこれがとても好評でした。
「『黒衣聖母』の鬼気迫る内容にこの落ちていくタイミングがぴったり溶け込んで、怖かった」、「私も買いたいからこの折本の販売元を教えて」と言われました。
経本の形に折ったのは、友人のアドバイスによるもので、江戸時代の逸話の背景に合うのではと自分で作ったものなのです。
山手ゲーテ座コンサート
いつも私のコンサート写真を撮影して下さっている沢木瑠璃さんに今回もお願いすることができました。写真を追いながら横浜公演のご報告を致します。
ゲーテ座ホール桜満開。眩しい日差しにはらはらと舞う桜が美しかったです。


受付には『紋次郎物語』のご案内をしました。
「プレゼントにしたいから」と何冊もお求めくださる方もいらして、嬉しいものですね。紋次郎も横浜の皆様にもかわいがってもらえて本当に幸せ者です。


「ファンクラブの入会申し込み」・・・Amical AYANEというファンクラブが実は昨年末に発足したのです。
京都を中心に私の活動を応援して下さる有志の皆様で作ってくださった会、
このことはまだ発表していませんでしたので、今回のコンサートが初お目見え。これについては、また改めてご紹介致したいと思っています。

客席は、密を避け、間隔を広く取っていますが、いらした皆様には安心感がありますし、ゆったりと座って頂けたのではと思います。

落ち着いて舞台に集中出来る素敵なホールです。
「会場も程よい広さで、味わい深い良い場所でしたね。
磨かれた床に映ったドレスが、夜の海に映る月光のように見えた時は感動しました。」とのカメラマンの沢木さんの言葉。
その様子を写真に素敵に収めて下さいました。
第二部のテーマは「祈り」、黒のイメージです。

「汝の祈祷 神々の定めたまふ処を動かすべしと望むなかれ」
『黒衣聖母』のテーマは、この時節には身につまされて重い痛みを心に感じますが、でもだからこそ、ひりひりとした感覚の中でしっかりと受け止められる主題なのかもしれません。
さすが芥川龍之介の筆致は迫りくるものがあり、聴く方にとっては刃が差し込まれるような衝撃があると思うのですが、読んでいる私自身にも言葉自体の持つエネルギーがそのままブーメランのように心に戻ってきて、放心状態のようになるのです。エネルギーを吸い取られるような,魔的な感覚というのでしょうか。言葉を発することって、そういう真剣勝負の要素を含んでいるのかもしれません。

横浜公演限定で、後半コーラスが加わりました。何年ぶりかで歩さんの登場。久しぶりとは思えないほど息がぴったりでした。
裏話。
東京と京都、コロナも邪魔してなかなか会って練習ができませんでしたので、zoomを使ってのリモートレッスンで急場をしのぎました。窮すれば通ず。ただ微妙に時差が生じ、やまびこのように遅れて歌が届くのには難儀しました。でも本番はその分、感慨深かったです。
そしてアンコール。

客席の表情もうっすらと見えます。久しぶりで人と会え、人のぬくもりを感じた時間でした。
じかに話す、語る、歌うってやはり何ものにも代えがたい素敵で大切なことだと思いました。声を発するその熱量が客席に届いて、同じような親和感を持ってこちらに戻ってきます。
大げさな物言いかもしれませんが、人が生きるって本来そういうことなのではないでしょうか。
まだしばらく今の状況は続き、それに対応するコミュニケーションの取り方もきっと生まれてくるのでしょうけれど、それにしても早く落ち着いて、普通のライヴが普通に開催される日がくるように祈るばかりです。

一年半、延期したコンサートがこうして実現できました。
励まして下さり、力を貸してくださいました多くの皆様、ご来場下さいましたお客様に心から感謝申し上げます。
ありがとうございました。


