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新しいシャンソンを新しい言葉に乗せて

   シャンソンの訳詞のつれづれに                      ~ 松峰綾音のオフィシャルブログへようこそ ~

ひとりで生きる ~堀文子さんの言葉

 せっかくの3連休なのに、清々しい秋晴れには程遠く、鬱陶しい蒸し暑さの中で終わってしまいましたね。
 台風が迷走していて、何とも嫌な感じです。また大きな被害が出なければよいのですが。

 今朝は珍しくゆっくりできたので、何気なくテレビをつけてみましたら、NHKで『ヒューマンドキュメンタリー 画家 堀文子 93歳の決意』という番組が流れていました。
 日本画家の堀文子さんのこれまでの足跡を紹介しながら、現在の活動や心境などを対談で綴ってゆく50分間の番組でしたが、堀さんの魅力に、すっかり引き込まれて見入ってしまいました。
 ご覧になった方もいらっしゃるでしょうけれど、とても感銘を受けましたので、少しご紹介してみたいと思います。
堀 文子さん(NHKオンデマンドより) 堀文子さんは大正7年生まれの93歳、今もバリバリの現役で、常に留まることなく、新鮮な感覚に満ち溢れた素敵な作品を生み出していらっしゃる方です。
 テレビの中の堀さんは、つややかに光る銀髪ときらきらとした眼差しがとても美しい、柔和な微笑みを絶やさない、上品で優雅な方でしたが、実は、77歳でアマゾンへ、80歳でペルーに、そして81歳でヒマラヤ山麓に取材旅行に出かけて、そこで出逢った風景や人々の姿を、多くの素晴らしい作品に結実しておられる、超スーパーウーマンなのです。
 多くの作家の著書の装丁や挿絵なども数多く手がけておられるので、名前がピンとこない方でも、どこかで堀さんの絵はきっと目にしていらっしゃるのではと思います。

(番組は、NHKオンデマンド http://www.nhk-ondemand.jp/goods/G2011031694SC000/ で視聴できますが、有料です)

 番組の中で紹介された、堀さんの言葉・・・・対談の中での何気ない言葉や、ご自身が著しておられるエッセイの中からの言葉・・・・心に残った言葉のいくつかをご紹介してみますね。(細かい言い回し等、不備があるかもしれませんが、このような感じの感動であったと了解いただくことでご容赦を!)


 *「群れない 慣れない 頼らない」
 堀さんの生活信条であり信念であると繰り返し語っておられました。

 何かに属する安定感より、一人であることを恐れず何にも属さない自由を選びたい。自分流を貫いてゆかなければ、自分の本当に求める作品世界にも、自分らしい人生にも行きつかない  慣れて来ると安心してものが見なくなってくるから、未知の世界に行きたい いつも今を脱皮し、初めての挑戦に挑んでいたい
・・・・「息の絶えるまで感動していたい」
 93歳の堀さんが、若々しく情熱に満ちて、でも当たり前のように自然にこのように話される言葉に圧倒されました。
 年を取れば取るほど、知らないことが多いことに気づいて、もっと色々な世界を知りたいという思いが強くなってくる、やりたいことがどんどん増えてきてとても楽しく、そして忙しい。
 ・・・いつも不甲斐ないわが身を省みると恥じ入るばかりなのですが、忙しいという言葉は、こういう意味にだけ使いたい、使わなければいけないのだと、改めて密かに小さな決意をした次第です。


 *「風景は思想だと思う。様々な国を旅してきて今思うのは、風景というものは、自然を取捨選択して、その国の人々が作り上げてきた、その国を表す象徴なのだと思う。」
 なかなか示唆に富んだ言葉ですよね。今の東京の風景は、東京で暮らす(日本で暮らす、と言い換えられるかもしれませんが)今の我々の生き方そのものを反映しているということになるのでしょうか。
 
 *「この先どんなことに驚き、熱中するのか。
 私の中の未知の何かが芽を吹くかもしれないと、これからの初体験に期待が湧く。私にはもう老年に甘えている暇などないのだ。」

 *「美というものは、役に立たないように思えるが、それで良いのだと思う。
 役に立ったら欲と結びついて美は消えてしまう。
 美は形のないもので、柔らかく、仰々しい姿を見せない。
 では一体何だろうと考えてみれば永遠に輪廻する命ということになるのだろう。」


 こうなると、美学的・哲学的な領域に入ってきてなかなか難しいのですが、堀さんは、美術の世界に生きて、絵画が目指す「美とは何か」をずっと考えてきた今、美というものは効率的な損得の世界からみれば、全く無駄なこと、でも、生き生きとした生命力があること、生きていることそのものなのではないかと思うのだと、最後に語っていらしたのがとても印象的でした。
 
 絵画の世界には全くの素人の私が言うのも何なのですがとても頷けますし、でも、これは絵画の範疇を超えて、芸術・学問一般に、更には人の生き方にも当てはまる気がするのです。
 
 堀さんのどの言葉も、しなやかで決然として潔く、そして明るさと喜びに満ちて本当に美しいと思いました。

 言葉は、その人の生きる姿そのものなのですよね。

 自分の言葉が、上滑りしてゆくものではなく、美しい輝きを放って沁み入ってくるものでありたいと、音楽や訳詞と関わる時、いつも願っているのですが、それは自分の心を磨いてゆくことからしか生まれないのだと改めて思った、幸せな休日の朝でした。

 番組で紹介していた『ひとりで生きる』(求龍堂、2010年刊)という堀さんの著書はまだ読んだことがありませんでしたので、早速入手してみようかと思っています。


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