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新しいシャンソンを新しい言葉に乗せて

   シャンソンの訳詞のつれづれに                      ~ 松峰綾音のオフィシャルブログへようこそ ~

落葉松の帰路 ~画家の見た風景~

 昨日の記事、「11月の軽井沢 ~落葉松の光の中で」 の続きです。
 
 休日はあっという間で、旅の終わりは、ぼんやりした充足感と、気持ちがしーんとしてくるような寂しさを感じるものですね。
 最後に、長野の東山魁夷館に立ち寄ってから帰ろうかと、ふと思いつきました。

 先日の記事、「椅子の魅力(2)~コンコルド広場の椅子~」の中で東山魁夷画伯のことをご紹介しましたが、その時から、そうだ、久しぶりで長野の美術館に!と思っていたのでした。

 『東山魁夷館』は、『長野県信濃美術館』と併設されており、善光寺のすぐ近くにありますが、善光寺の賑わいとは対照的に、落ち着いた静寂な佇まいを見せています。
 年に数回ずつテーマを設けて、作品を入れ替え、毎回約70点ずつを展示しているのだそうですが、今回は「巡りゆく日本の山河」というテーマで展示されていて、四季折々の美しい日本の自然が描かれた作品を心ゆくまで堪能することが出来ました。

東山魁夷館 「コンコルド広場の椅子」は今回のテーマからは外れるためか、残念ながら展示されていませんでしたが、あの「白い馬のいる風景」のシリーズは、何枚もあって満喫できましたし、豊かな表情を持つ数々の風景画は何ともいえず情感が溢れ、素晴らしかったです。
 時節柄、秋の風景画も数多く飾られていて、ここに来る道すがら、眼に飛び込んできた風景と重なるものもあって、更に感銘を深くしました。

 東山魁夷館で『色の風景三部作』という素敵な画文集を見つけました。
その中の一冊「東山魁夷 橙の風景」(求龍堂)を買い求めてきましたが、今回展示されている作品も多く載っていました。
 この中から何枚かの絵画をご紹介しながらの旅の最後のドライブ、軽井沢から菅平を経由し長野までの2時間弱の道程をお付き合い下さいね。



 さて、では、遡り、軽井沢からスタートです。

 山は微妙な高度の違いで、風景とその色合いが一変します。
 今は紅葉の時期ですから、それが山全体の色彩のグラデーションに如実に表れている気がします。

 黄葉の山々 黄葉の山
 小諸を過ぎる辺りから、車窓に収まり切れないほど、悠然と落葉松の峰々が広がってゆき、こんもりと盛りあがるような金褐色の落葉松群が次々と出現してきました。
道を彩る落葉松
 車の走る道も、落葉松の針葉に埋まって、アスファルトの色が黄褐色に。車が通ると地吹雪のように舞い上がります。

 そして、ワイパーで払っても払っても、フロントガラスに絶え間なく降ってくる落葉松の落葉。これこそ!!と、私としては、思わずテンション最高潮です。

 夏は一面キャベツ畑だったあたりです。
 収穫を終え、今は、濡れたようなまっ黒な黒土が掘り返されて、眼に飛び込んできました。

 キャベツ畑と落葉松 キャベツ畑と落葉松
 春を呼ぶ丘(東山魁夷)

 冬になり、やがて、春が近づき、芽吹きの時を再び迎えるのでしょう。白い馬が訪れるとしたらこんな情景かもしれません。黒い土、僅かに芽をつける雑木林、丘の上には柔らかい新緑の落葉松。「春を呼ぶ丘」という白い馬シリーズの絵です。




  輝くばかりの黄葉の樹が、暗い杉木立と並んでいる、
  互いに明暗の対照を、際立たせ合う、秋の日の豊かさ。
 

 左は、こんな添え書きが綴られている『黄耀』という題の、魁夷画伯の絵画です。
 黄耀(東山魁夷) 杉と落葉松 右は、落葉松の黄金色と杉の深緑のコントラストが面白くて思わず写してみた写真です。目のつけどころは少し似ていたかなと、畏れ多い事を思ってしまいました。


 全山黄葉 秋深(東山魁夷)  秋の色、黄褐色の落葉松の峰。
 右は『秋深』という絵画。こちらは赤の色調ですね。下はこの絵を語る画伯の言葉。

   秋が深くなる。
   日一日と
   森は華やかな装いを落として、
   梢や幹を現わしてくる。



山奥の沢
 
 下を眺めると渓谷は、速い流れでした。

 落ち葉も水を堰き止めるすべなく、流れに巻かれていきます。



 

 そして、『木枯らし舞う』という次の作品。 とても素敵かと。
 このような添え書きがありました。

   目を上げると周囲の林の梢から黄金色の葉が、
   いっせいに落ちて空中に舞った。
   秋の終末を告げるフィナーレのように華やかで淋しい一瞬である。
   私はしばらくこの落葉で身体中が包まれてゆくのを感じながら
   佇んでいた。


   木枯らし舞う(東山魁夷)

林檎畑2
 美術館から出てしばらくすると、当たり前のように林檎畑が続きます。林檎には独特の情緒がありますね。
 
 たわわに実って何とも愛らしく、そして美味しそうで、心和む信州の旅でした。





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